◆フランス映画で本格的なゾンビ、スプラッターは珍しいと言われているが、それ以上にここまで面白く仕上がったということが何よりもスゴい(75点)
ヤニック・ダアンとバンジャマン・ロシェが共同で監督を務めたフランス製ゾンビホラー・アクション。両監督ともに本作がデビュー作となる。
同僚を殺害されたため、ウィセム刑事(ジャン=ピエール・マルタンス)たちが復讐するべくギャングたちが潜伏する古びた高層ビルに乗り込む。刑事たちとギャングたちが争っている最中に突如一匹の強力なゾンビが現れ、噛みついて来たりと暴走する。ゾンビの数はさらに増え、ビルからの脱出は困難となったため刑事たちは憎きギャングたちとやむをえずに手を組むこととなり、この死霊の大群に挑む。
監督は「ゾンビ映画を撮りたかったのではなく、アクション映画を目指した」という。確かにゾンビが出没する前から刑事とギャングの争いは、フランス製ギャング・アクションさながらの痛々しい残酷バイオレンス描写が観られるし、ゾンビ登場後も殴る蹴るの暴行を加えて徹底的にゾンビを痛めつけるシーンが観られたり、ショットガンやマシンガンを駆使してゾンビ軍団を蹴散らしたりといったアクションシーンもかなり気合が入っている。とにかくアクションを強化していることは明らかなのである。しかも、テンポはすこぶる良い上に見応え抜群のシーンに仕上がっているので面白さは十分に味わえる。中でも紅一点であるクロード・ペロン扮する女刑事オロールが女ゾンビをボコボコにするシーンは、観る者に強烈なインパクトを与えてくれること間違いなしだ!!
しかも、本作のメインディッシュであるゾンビをネタにしたスプラッター描写もしっかりとツボが押さえられている。人を喰らいつくシーンからは残酷スプラッターならではの面白さを味わえるが、血みどろ満載の悪趣味残酷描写を全面に押し出して面白さを醸し出すようなことはしていない。本作に登場するゾンビは、近年のゾンビ系ホラーで観られるような走るゾンビであり、一発や二発の銃弾を喰らっただけで簡単にはくたばらない、しかもかなり凶暴。そんな最凶ゾンビの数は、とにかくハンパないのだ。言ってみれば、スプラッター描写を押さえつつも、ゾンビの数を多くして威勢良く描くことに力を注いだことによってゾンビ系スプラッターとしての面白さと過激さを発揮することに成功したのである。
本作のようにフランス映画で本格的なゾンビ、スプラッターは珍しいと言われているが、それ以上にここまで面白く仕上がったということが何よりもスゴいことだ。
(佐々木貴之)