◆観る者をハラハラさせると同時に大きな衝撃を与えてくれる(70点)
ドイツはベルリンに存在する国際的な大銀行IBBC。経営破綻したこの銀行にはマネーロンダリング、武器密輸といった違法取引の疑いがある。インターポール捜査官サリンジャー(クライヴ・オーウェン)と検事補ホイットマン(ナオミ・ワッツ)が共同で捜査に乗り出し、ベルリン、リヨン、ミラノ、ニューヨーク、イスタンブールへと次々と国境を越えて追跡していく。だが、証人は次々と殺害され、証拠も消されてしまう。
エリック・ワレン・シンガーが、1991年に破綻したBCCI銀行のスキャンダルにインスパイアされて脚本を書いた。この緻密な脚本によって描かれたサスペンス描写は、硬質で骨太な感じが強く、かなり渋いイメージだ。さらに、リアリティーを追求したことによって重厚な風格を漂わせる。また、刑事映画としてもまとまっており、なかなか面白く仕上がっている。中でもある事件現場のホテル屋上で発見された犯人の足跡から義足の方番が割り出されるシーンは、かなり印象的だ。このスリリングな描写は、観る者をハラハラさせると同時に大きな衝撃を与えてくれる。
本作はアクション映画としての一面も持っており、中盤以降に大掛かりな見せ場が用意されている。それは、ニューヨークのグッゲンハイム美術館の館内で入場客を巻き添えにしてのデンジャラスな大銃撃戦だ。サリンジャーが握るマシンガン、義足の暗殺者コンサルタント(ブライアン・F・オバーン)の命を狙うべく続々と現れるヒットマンの銃が弾丸をこれでもかと言わんばかりに炸裂させ、ガンガンと銃声を唸りまくらせる。戦場と化した館内はメチャクチャになってしまう。ダイナミックに描かれたこのシーンはまさに壮絶的であり、最高の面白さを味わえること間違いなしだと言い切れる。クライヴが『シューテムアップ』(07)に続いて凄まじいガンアクションを魅せつけてくれたのである。
ラストは、サリンジャーが自身の正義感で法の枠を超えた戦いに単独で挑む。彼の人間としての、捜査官としての魅力がラストスパートに向けて一気に燃え上がる。その姿は、無精ヒゲが引き立てる男臭い風貌と相俟って非常に男らしくてカッコいい。
(佐々木貴之)