ザ・コーヴ - 福本次郎

◆深夜、立ち入り禁止区域に高価な機材を密かに運び込み、ペンライトだけを頼りに、岩に偽装したカメラやマイクを仕掛けていく。その様子をサーモカメラでとらえたシーンはサスペンスに満ち溢れ、スパイ映画を見ているようだ。(60点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 住民が寝静まった深夜、尾行に注意を払いながらミニバンを走らせ、フェンスを乗り越え立ち入り禁止の入り江に潜入する撮影クルー。特注した高価な機材を密かに運び込み、ペンライトだけを頼りに、岩に偽装したカメラやマイクを仕掛けていく。その様子をサーモカメラでとらえたシーンはサスペンスに満ち溢れ、スパイ映画を見ているかのよう。隠し撮りをする過程を記録する行為がこれほどまでにスリリングとは思わなかった。米国的な「正義の押し売り」的な方法論は別にして、地元漁師をすべて敵に回したスタッフが監視の目をかいくぐって“真実”を告発しようとする姿勢はあくまで戦闘的で、危険を顧みない勇気と行動力は称賛に値する。

 元「わんぱくフリッパー」でイルカの調教担当だったリックは、イルカ解放運動家となって、太地町のイルカ漁に反対する。食用にされるイルカが大量に処分される秘密の入り江の存在を知ったリックは、極秘作戦を立ててイルカ虐殺シーンをレンズに収めようをする。

 漁船に追い立てられ狭い入り江に網で閉じ込められたイルカたち。水族館に売られるものを除いてはすべて肉にされる。小舟に乗った漁師たちは密集して身動きが取れなくなったイルカに容赦なく銛を打ち込み、痛みに耐えかねたイルカたちは身をよじり飛び跳ね、断末魔の悲鳴をあげて息絶えていく。真っ赤な血に染まった入り江が、人間のイルカたちへの仕打ちのむごたらしさを象徴していた。。

 映画はその他にも、イルカの知能指数の高さを示す映像やIWC総会における日本代表の苦し紛れの弁解にしか聞こえない発言、イルカ肉が高濃度の水銀に汚染されているなどの未確認データを盛り込み、イルカ殺しがいかに人間にとって不要かつ不利益であるかを訴える。膨大な映像から自分たちの主張を裏付ける部分だけ抜き出して編集た上、扇情的なサウンドや感傷的な音楽で感情的な部分を補強し、観客の気持ちに問題提起を促すという、ドキュメンタリー映画製作の手本を示しているような作品だった。テーマの是非はともかくとして。。。

福本次郎

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