ザ・コール 緊急通報指令室 - 樺沢 紫苑

限られた場面設定でこれだけ盛り上がるとは(点数 80点)


(C) 2013 Emergency Films, LLC. All Rights Reserved.

「警察24時」や「救急救命24時」といった、
警察や救急に張り付いたドキュメンタリー特番が人気ですが、
それは警察や救急といった「命」に関わる現場に対して、
多くの人が強い興味を持っている証拠です。

『ザ・コール 緊急通報指令室』は、
日本の119番に対応するアメリカの「911番」で
電話対応するオペレーターを主人公にした物語。

ポイントは3つ。
一つ目は、「ソリッド・シュチエーション」。

ホラー映画の「ソウ」、あるいは「キューブ」といった
極めて限定された場面で物語が展開する映画を
「ソリッド・シュチエーション」ものといいます。

限定された舞台設定から、どこまで物語をふくらませる
ことができるのか? 

限定された場面だからこそ、深まる心理描写が魅力です。

この「ザ・コール」は、変則的ではありますが
「ソリッド・シュチエーション」ものと言っていいでしょう。

ハル・ベリー演じる緊急通報指令室のオペレーター、ジョーダンは、
何者かに誘拐され、車のトランクに監禁された少女からの
通報を受けます。

通話だけを頼りに、彼女はどこにいるか、
犯人は誰なのかを推理し、
なんとか少女を救出しようとします。

犯人は移動するので場面展開はありますが、
基本的に電話オペレーターのジョーダンは
緊急通報指令室の中にいて、
「会話」だけで「証拠」を集めて、観察力と頭脳勝負で、
様々な推理をめぐらし、犯人を追い詰めていくところが、
いままでありそうでなかったパターンで、新鮮さがあります。

ポイントの2つ目は、「電話コミュニケーション」。

私は以前、3年間アメリカに留学していたときに、
「英語」でかなり苦労しましたが、
特に「電話」というのが苦手でした。

対面の会話は相手の顔が見えていますし、
ゼスチャーも通じますが、相手が見えない電話で
コミュニケーションをとるのは、本当に大変なことです。

この映画では、警察や救急の通報を受けるという
「緊急通報指令室のオペレーター」という仕事を扱っています。

そこに電話をかける人は、犯罪か病気か、
生きるか死ぬかの瀬戸際にある人たちであり、
興奮、恐怖、不安な感情に支配されています。

そんな人達の気持ちを落ち着け、瞬時にコミュニケーションを
とっていく「電話コミュニケーションのプロ」。

非常に珍しい職業ですが、心理学にも通じる彼女たちの会話技術、
そして実際に電話相手の気持ちを掴んでいくテクニックに
引きこまれます。

ポイントの3つ目は、「プロフェッショナル根性」。

この映画の冒頭。ジョーダンは電話の対応に失敗し、
取り返しのつかない結果を引き起こしてしまいます。

この仕事、たかが「電話の取次ぎ」ではないのです。
電話相手の「命」を直接預かる、責任の重い、
たいへんな仕事。

そこで、いかに適切なオペレーティングをして、
いかに迅速に警察や救急車を派遣するのか、
すべて彼女たちの対応にかかっています。

電話はまさに「命綱」。
一本の電話から命を救う、
彼女たちの「プロフェッショナル根性」に心を打たれます。

ハル・ベリー主演、誘拐された少女役が
『リトル・ミス・サンシャイン』のアビゲイル・ブレスリン。
この2人の会話が映画の軸となるだけに、
2人の演技も見応えがあります。

そして「ラストシーン」は、賛否両論別れるところですが、
かなり衝撃的です。

樺沢 紫苑

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