◆ベタでもいいから、もっとドラマティックさが欲しい(45点)
『アルマゲドン』『ディープ・インパクト』に続いて、地球に襲いかかる大災害を描いたパニック超大作。
今回は、地球内部の核の回転が止まり、ヴァン・アレン帯が失われるという大災害を描くが、空から降ってくる巨大隕石に比べれば、やはり地味&実感に乏しいという弱点は否めない。
今回も人類(アメリカ合衆国)が選ぶ対処方法は、「核爆弾を仕掛けて再びコアを回転させる」というおなじみのもの。パニック映画では、核は正義の武器なのである。
しかしながら、ここから先に、リアルフィクション的には大問題が生じる。それは、現実の人類は、宇宙には行った事があるが、地球内部には行った事が無いという事実である。
だが、この映画の人類(アメリカ合衆国)たちは、地殻やマントル層を通り抜けて、外核部分まで届く穴を掘らねばならないのである。多少なりとも理科の知識がある観客にとってみれば、荒唐無稽にもほどがあるという展開なのである。
無論、たわいもない娯楽映画なのだから、細かい事に目くじらを立てる気は無い。だが、「宇宙に新型シャトルで核爆弾を運ぶ」事は許せても、「地球の中心までドリル船で突き進む」というのは、いかにハリウッド映画に寛大な私といえども、見過ごしがたい設定である。
結局『ザ・コア』の観客は、ほとんどこども向けSF並のはちゃめちゃさを、受け入れなくてはならないという事である。それが出来無い人には、この映画は向いていない。
後半は、そんなわけでドリル船が、ただひたすら地球の中心に向かって、核爆弾を置きに行くために突き進む。だが、地球の内部の景色なんて、世界中どの科学者に聞いても誰も知らないわけだから、CGで描かれた架空の地中世界を見ても、「どうせCGデザイナーが適当に考えた架空の景色だよなぁ」という考えが頭をよぎり、あまりワクワクしないのが残念だ。
それよりは、ちょっとだけ写る本物のアメリカ軍空母艦隊のほうが、よっぽど迫力があるのが皮肉である。やはり、嘘っぱちのCGメカと景色だけでは、大人の娯楽としては弱いと感じる。
ただ、地中に入るまでの前半は面白い。世界各地がパニックに陥るあたりは、1行目に書いた2作品を彷彿とさせて、とても面白い。
ただ、愛と感動の物語でもあるその2作品に比べると、そうしたドラマ面が『ザ・コア』には希薄なので、こうした王道のハリウッド超大作に出掛ける観客の期待を裏切る恐れがある。(あの2本は、娯楽大作好きなら満足度高いでしょ?)
まとめとして、『ザ・コア』の美点は、前半の政治・軍事シミュレーション的な面白さ。逆にマイナス点は、ドラマ性の薄さと、ちょっと現代科学と離れすぎた設定。
それなりに楽しかったが、満足度はそれほど高くない一本であった。
(前田有一)