ベタな演出はアリスが次にどこに現れるかを予想させ、その期待を決して裏切らない。(点数 40点)
(C) 2010, Chamberlain Films, LLC. All rights reserved.
悪意と怨念に満ちた暗く長い廊下、死者の悲鳴が張り付いたような陰
鬱な壁、そして猜疑心をたたえた職員の目。いまだ拘束や電気ショッ
クなどの非人間的な治療が一般的に行われていた’60年代の精神病院、
中でも特に管理の厳しい“制限区域”に収容された患者の目に映る、
閉ざされた空間の描写がリアルだ。“自分は正常だ”と医師やスタッ
フに強く訴えるほど異常性が強調される逆転の世界、ヒロインは隠ぺ
いされた過去を探るうちに恐るべき真実を知る。幻覚と現実の境が曖
昧になり意識が混乱していく過程は、やはり彼女が正気でないことを
予感させる。
【ネタバレ注意】
一軒家に放火し逮捕されたクリステンは精神病院に保護される。そこ
には彼女の他に4人の入院患者がいたが、いつの間にか1人また1人と人
数が減っている。さらに亡霊の影がちらつきだす。
アリスと呼ばれる亡霊は入院患者に恨みを持っているらしく、次々と
彼女たちを血祭りにあげ、やがて魔手はクリステンにまで伸びてくる。
ところが、アリスに殺された患者の死体はどこにも見当たらない。し
かもアリスは神出鬼没でクリステンの予期せぬ場所・タイミングで襲
い掛かってくる。
そんな、あまりにもベタな演出はアリスが次にどこに現れるかを予想
させ、その期待を決して裏切らない。そもそもクリステンが精神に異
変をきたしている設定自体が、この映画のオチを予感させるのだが。
(福本次郎)