ザ・ウォーカー - 福本次郎

◆失われた文明、崩壊した都市、荒廃した人心。色彩をなくした地上を歩く男が大切に運ぶのは「本」という名の希望。濃淡を強調したメタリックな映像は理性の喪失を象徴し、手を血で染めなければならない彼の苦悩を表現する。(40点)

 容赦なく照りつける太陽と砂漠を横断する一本道。失われた文明、崩壊した都市、荒廃した人心、色彩をなくした地上をひたすら歩く男が大切に抱えているのは「本」という名の希望。弱い者は常に餌食にされ命を落としていく暴力が横行する世界、主人公は圧倒的な剣さばきと銃器爆弾の扱いで悪党どもをぶち殺していく。濃淡を強調したメタリックな映像は理性の喪失を象徴し、降りかかる火の粉を払うためには手を血で染めなければならない彼の苦悩を表現しようとするが、変に凝った絵作りをして意味深長に見せるよりB級アクションに徹したほうが面白くなっただろう。

 徒歩で旅するウォーカーは酒場で瞬時に十数人のチンピラを倒し、街のボス・カーネギーの客分になる。夜、カーネギーの愛人の娘・ソラーラがウォーカーの部屋に送り込まれ、彼女は荷物の中に聖書を見つける。それこそカーネギーが長年探し求めていたものだった。

 世界戦争後の焚書であらゆる書物が消えている。そんな時代、カーネギーは聖書の言葉で世の中を支配できると思っている。ウォーカーは天啓に導かれ聖書を西に運ぶのが使命と信じている。カーネギーは権力の裏付けとして聖書を利用しようと企むが、人間離れした強さを持つウォーカーは命令に従わない。おそらく“神”の概念ももはやないのだろう。だから信仰が生きていたころの遺物が奇跡となる。本は文字で記録された人類の知性の伝承であることをカーネギーとウォーカーも知っている。聖書はそのシンボルとして、手に入れた者が人類の未来を左右できるパワーを持ちうるのだ。

 結局、ウォーカーはソラーラの身と交換に聖書をカーネギーに渡してしまうが、内容を一字一句記憶している彼はその内容をアルカトラズ島から復興を計画するリーダーに伝えミッションを終える。一方、カーネギーが奪った聖書は点字でだれも解読できないというオチなのだが、ソラーラの母が盲目という設定がまったく生かされていないのが残念だった。そもそも丸暗記しているのだったら持ち歩く必要はないし、米大陸を横断するのに30年もかかるものなのか。。。

福本次郎

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