サンシャイン・クリーニング - 町田敦夫

◆『リトル・ミス・サンシャイン』の製作陣が送る良質な「2匹目のドジョウ」(70点)

 安倍内閣が再チャレンジの可能な社会を作ろうと提唱したのは3年前のことだったが、なんだか世の中、再チャレンジしにくくなる一方のように感じられる。『サンシャイン・クリーニング』は、そんな時代の空気に期せずしてマッチした作品。負け犬家族を温かく見つめた『リトル・ミス・サンシャイン』の製作陣が、再びハートウォーミングなコメディを送り出した。

 主人公は人生に行き詰まった2人の姉妹だ。学園のアイドルだった姉のローズ(エイミー・アダムス)は、今や不倫中のシングルマザー。妹のノラ(エミリー・ブラント)は仕事が続かず、いまだに実家にパラサイト。そんな2人が高額の報酬につられて事件現場専門の清掃会社「サンシャイン・クリーニング」を開業するのだが、なにしろ仕事場は血痕と腐臭にまみれた修羅場。ろくな経験も専門技術も持たない姉妹が繰り広げる珍妙なドタバタ劇は、ブラックでシニカルな笑いを誘う。

 『魔法にかけられて』で明るい魅力をアピールしたエイミー・アダムスをローズに、『プラダを着た悪魔』で特異な個性を見せたエミリー・ブラントをノラに起用したキャスティングが絶妙だ。キャリアも結婚も手にしたかつてのクラスメートに対するローズの屈折や、母親の死を引きずるノラのトラウマが、2人の女優の好演で切なく胸に迫ってくる。姉妹の父親を演じたアラン・アーキンも、アカデミー賞助演男優賞に輝いた『リトル・ミス・サンシャイン』に続き、クセのあるいい味を出した。

 死の影と濃密に触れ合う仕事をするうちに、ダメダメだった姉妹は、いつしかプロ意識や遺族への思いやりに目覚めていく。このあたりの展開は、まるで米国版『おくりびと』の趣きだ。死者を見送ることは、自分の人生を見つめ直すこと。ローズは長年の不倫を清算する決意を固め、ノラは自立に向けて歩み出す。

 だが「成長」したからといって「成功」するとは限らないのが人生の定め。ローズとノラも思わぬ逆境にさらされて、すべてを失うはめになる。それでも生きていけるのは、切っても切れない家族の絆があればこそ。ケンカ別れしていた姉妹がレストランのトイレで母親の想い出を語り合う、そんな何気ないシーンが、なぜだかジンワリ心に染みる。登場人物たちの人生が取りたてて好転するわけではないけれど、見終わった時、苦い共感の中で、少しだけ前向きになれる作品だ。

町田敦夫

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