パブリック・エネミーズ - 福本次郎

◆銀行強盗と逮捕、脱獄を繰り返し、大恐慌に苦しむ米国で「公共の的No1」と呼ばれた犯罪者に、政府の無策や銀行家の強欲に鬱憤をため込んでいた民衆は共感を寄せる。映画は彼の最期の1年に焦点を当て、その人間像に迫る。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 自ら囮となって刑務所に忍びこみ仲間を救出する大胆、1分40秒で金庫のカネを奪い人質を取って逃走する早業、FBIの包囲をものともせず強行突破する強運。銀行強盗と逮捕、脱獄を繰り返し、大恐慌に苦しむ米国で「公共の的No1」と呼ばれた犯罪者、殺人や誘拐を厭い、汚れたカネしか奪わない彼の犯行スタイルに、政府の無策や銀行家の強欲に鬱憤をため込んでいた民衆は共感を寄せる。映画は彼の愛と逃亡に明け暮れた最期の1年に焦点を当て、その人間像に迫る。

 1933年、仮釈放中のジョン・デリンジャーは刑務所から仲間を脱走させ、さっそく銀行を襲い大金を手に入れる。一方FBIではフーバー長官がメルヴィンをリーダーとする「デリンジャー特捜班」を設け、ジョンたちの足跡を追う。

 クラブで見かけたビリーという女にひと目ぼれし、勤務先まで押し掛けて口説くジョン。退屈な日常を送っている女にとって、強引に人生を変えてくれそうなジョンは魅力的に映ったはず。ふたりはその後行動を共にし、ジョンはビリーに一生贅沢な暮しをさせる夢を語る。ジョンがいつかは捕まり、そんな夢がかなうわけはないと分かっていても、希望の持てない暮らしよりよりはましと彼についていくビリーの気持ちが哀しい。ただ、ジョンが強盗を繰り返す理由としてはビリーの存在は影が薄く、いまひとつ2人の深い絆が見えてこない。

 まだ電子機器のなかった当時、広域犯罪はあまりなかったのだろう。メルヴィン側の地道な捜査だけでなく、ノミ屋が連邦犯罪を取り締まる法律や組織ができるのを恐れてジョンたちに協力を拒むシーンなど時代の空気を感じさせる。しかし、ジョンが警察署の捜査本部に堂々と入って行く場面には疑問を挟みたくなる。ジョンが自分の死期を予感していることを表現したかったのだろうが、それまで積み重ねてきたリアリティが一気に崩れてしまった。人通りの多い映画館の前で射殺されて伝説となったジョンの刹那的な生き方、メルヴィンが導入した科学的手法、どちらかに比重を置いたほうが物語としてはスピード感が出たに違いない。

福本次郎

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