サブウェイ123 激突 - 小梶勝男

◆「サブウェイ・パニック」のリメークだが作風はまるで違う。トニー・スコットらしい映像美とテンポの良さで一気に見せる(67点)

 1974年のジョセフ・サージェント監督作「サブウェイ・パニック」は秀作だった。本作はそのリメークだが、見事にいつものトニー・スコット監督の世界になっているのが面白い。

 ニューヨークの地下鉄「ペラム123号」の先頭車両が4人組の男たちに乗っ取られる。犯行グループのリーダー(ジョン・トラボルタ)はライダーと名乗り、交渉役に運行指令室の指令係ガーバー(デンゼル・ワシントン)を指名。19人の乗客を人質に、1時間以内にキャッシュで1000万ドル用意するよう要求する。1分遅れるごとに1人ずつ殺すというライダーと、事件解決への糸口を見つけようとするガーバーとの、無線での交渉が続く。

 スコット監督はどんなに狭い場所でも360度回転する台を持ち込んで、数台のカメラをコントロールして撮影するという。今回も、狭い運転室を自由に撮るため、わざわざ車両のセットを作ったらしい。その成果は十分に出ている。冒頭から、ノーマル・スピードの映像がほとんどない。早回しだったり、スローだったり。短いカットをつなぎ、過剰なまでに効果を付ける。「ドミノ」や「デジャヴ」で見られたあの映像世界は、ニューヨークの地下鉄でも健在だ。

 そして、スコットらしいテンポの良さで、物語はどんどん進み、ラストまで澱みなく一気に見せてくれる。派手で退屈しない。だがなぜか、「映画を見た」という満足感が薄い。ドラマが今ひとつ盛り上がっていかないのだ。

 今回の主人公、ガーバーはいつものスコット作品のヒーローと違って、普通の地下鉄職員だ。最初は事件にかかわるのを嫌がっていたのに、途中から積極的にライダーを追いつめるようになる。他人の車を無理やりに止め、奪い取って追いかけ、最後にはライダーに銃口まで向ける。普通の地下鉄職員が、次第に「いわゆるヒーロー」になっていくのに、呆気にとられてしまった。これじゃいつものデンゼル・ワシントンと同じだ。ライダーもエキセントリック過ぎて、地下鉄をジャックするほど計画性のある男に見えない。この2人の関係も思わせぶりに描かれているわりにはドラマチックになっていかない。

 ウォルター・マッソーとロバート・ショウという名優2人が共演した「サブウェイ・パニック」が余りによく出来ていたので、比べるとどうしても不満を覚えてしまう。スコット作品にドラマの面白さを求めるのが、最初から間違っているのかも知れない。映像とテンポだけでも十分に楽しめるのだから。

小梶勝男

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