◆ゾンビを殺すのは簡単だが、もしそれが愛する家族だったらためらわずに止めを刺せるか。その問いに即答できない人間たちがゾンビを調教しようとする。緊急事態にもかかわらず、自分のプライドにこだわる人間たちの姿が滑稽だ。(50点)
死人がよみがえって人間を襲うようになった世界、絶海の孤島では「ゾンビは殺すべき」派と「ゾンビを飼いならす派」の二派に分かれて壮絶な主導権争いが起きる。頭部を破壊しないと活動をやめないゾンビを殺すのは簡単だが、もしそれが愛する家族だったらためらわずに止めを刺せるか。その問いに即答できない人間たちがゾンビを鎖につないで調教しようとする。しかし、本筋はあくまで島で勢力を二分する男同士の確執、そこになんの思考や打算もないゾンビが敵味方を問わず歯をむき出しにしてくるからややこしい。そんな緊急事態にもかかわらず、自分のプライドにこだわる人間たちの姿が滑稽だ。
州兵を離脱して強盗団となったサージの小隊はひとりの少年と合流し、「ゾンビがいない島」を目指す。フェリー乗り場に着くと、島を追い出されたパトリック率いる追剥団の待ち伏せにあうが撃退し、フェリーを奪って島にたどりつく。
サージたちがキャンパーを襲撃した時に、杭に串刺しにされたゾンビの生首がうめき声を上げるシーンが、この世の終末ぽくて笑える。もはや人間ではないが完全に死んでもいない。そこには死者に対する尊厳など微塵もなく、キャンパーたちはゾンビをいたぶることでむしろ溜飲を下げている。一方、島の有力者・シェイマスはゾンビをできるだけ人道的に扱おうとする。相変わらず動作が鈍く噛みつくしか能のないゾンビだが、人間に同情されるようになったのは、彼らも進化した証拠なのだろうか。
サージたちはパトリック一派と協力してゾンビ退治に励むが、同時にシェイマス一派との抗争にも巻き込まれる。対ゾンビという観点からは、本来、生き残った人間は力を合わせなければならないはずなのに、大量のゾンビが迫ってくる危険な状態になっても殺し合いを止めない。ここで描かれる人間たちをみていると、同類の肉は決して食らわないゾンビよりもその本質は愚かなのではと思ってしまう。。。
(福本次郎)