サイドウェイズ - 小梶勝男

◆米映画「サイドウェイ」を日本人キャストでリメーク。四人の主人公たちを日本人に変えたことで、オリジナルよりもしっくりと来る作品になった(75点)

 アカデミー賞で5部門の候補となり、脚色賞を受賞した米映画「サイドウェイ」を、舞台は同じ米カリフォルニアで、日本人キャストでリメークした作品。あのいかにもアメリカ的な映画を、主要な登場人物だけ日本人に替えてリメークするという、非常に変わった企画で、何の意味があるのだろうかと思ったが、これが意外に面白かった。オリジナルで共感できなかった部分がちゃんと共感できるように直されていて、外国人スタッフが作ったにもかかわらず、日本人が見て違和感がないばかりか、日本映画らしい作品になっている。監督のチェリン・グラックが日本で生まれて高校まで育ち、日本人の感覚を分かっているからだろう。多くの日本人にとっては、オリジナルよりも本作の方がしっくりとくるだろう。

 そもそもオリジナルには疑問があった。アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞など、様々な賞に輝いてはいるが、どうにも共感しにくい作品で、個人的には好きになれなかった。演出や役者はいいのだが、カリフォルニアでワイナリー巡りという話がピンと来ない。アメリカの中流階級のゆとりみたいなものを感じ、主人公たちにあまり同情出来なかった。自分とは無関係な世界のように思えたのだ。

 本作は、基本的なストーリーはほぼ同じなのだが、登場人物の設定が違う。一番大きな違いは、当たり前だが主人公たちが米国人ではなく、日本人だということだ。主人公の斉藤道雄(小日向文世)は、友人の結婚式に出席するためアメリカに来るのだが、英語がほとんど話せない。売れないシナリオライターで、いわゆる「負け組」だ。オリジナルでポール・ジアマッティが演じた国語教師ほどインテリではないし、口もうまくない。それほど裕福でもなさそうだ。

オリジナルでは国語教師がワイナリーで働く女性と恋に堕ちるのだが、現実には中年男が短い旅の中で魅力的な女性を口説くことなど出来るわけはない。そんな映画を見せられても、自分との無関係さを痛感させられるばかりである。

それに対し本作では、道雄が出会う女性(鈴木京香)は、若いころの友人で、片思いの相手だ。再会したのだから、仲良くなるのも納得できる。この女性がアメリカで一生懸命、無理をしてキャリアを積もうとしているという設定もいい。

人物の設定が変わっただけで、ほぼ同じ流れの話なのに、全く印象が違ってくるのが面白い。共感出来なかった話がいちいち共感出来るようになった。

 主演の小日向文世が、情けない中年男を実に生き生きと演じている。小日向氏自身も英語が全く出来ず、食事も合わなくて、1か月にわたるアメリカでの撮影に極度のストレスを感じていたそうで、そのつらさが役柄とうまくリンクして、道雄のキャラクターを作り上げていた。鈴木京香も良かった。美人の彼女が、ときどき中年女のちょっと怖い顔や、疲れて老け込んだ顔を見せる。そこにハッとするようなリアルさを感じた。意地になって外国で踏ん張ってきたすでに若くない女性。その見えないストーリーが、一瞬の表情で見えてくる。名演だと思う。二人がしっかりとリアルさを出しているので、他の二人、生瀬勝久と菊地凜子のちょっとオーバーな演技も浮いてしまうことがなく、対比の妙で面白く見ることが出来た。

 唯一、生瀬演じる元俳優が女性警察官と浮気をし、女性の夫に見つかる場面だけは、オリジナルの方が良かった。オリジナルではただ夫に見つかるだけだったのに、本作ではなぜか女性がSM愛好者という設定に変わっていた。非常に珍妙なシーンだった。

小梶勝男

【おすすめサイト】