あくまでリアル嗜好(65点)
車好きの仏人リュック・ベッソン率いるヨーロッパ・コープの作品には、荒唐無稽なカー・アクションが多いが、本作は麻薬犯罪ルートを描くリアリズムが新鮮だ。題名のゴー・ファーストとは、最速で麻薬を運ぶ運び屋のこと。パリ警視庁のマレクは麻薬密売組織に同僚を殺される。猛訓練を経て潜入捜査官になった彼は、ゴー・ファーストとして組織に潜入、モロッコからスペイン、さらにフランスへと高速スポーツカーに大量の麻薬を積み込み、危険な任務に出発する。
高級車によるカーチェイスは、米国のそれとは違い派手なCGはなく、あくまでリアル嗜好。麻薬がヨーロッパに持ち込まれるプロセスも、非常に綿密だ。ただ、組織にもう一人いるという潜入捜査官は容易に予想がついてしまうし、主人公マレクの猛特訓も何だか安易。警官になる前に泳ぎくらい習得しとけとツッコミを入れたくなる。それでも、野獣のようなカーアクションと、主役のロシュディ・ゼムの不敵な面構えがいい。実録ものの迫力に加え、潜入捜査という静と、運び屋という動の対比が面白さを生んでいる。
(渡まち子)