◆首相暗殺の濡れ衣を着せられた男の逃亡劇だが、同時に青春映画でもある。ストーリーはとても面白いが、映画ならではのダイナミズムに欠けるのが惜しい(80点)
タイトルはビートルズの同名曲で、作品のテーマにもなっている。2時間20分近い上映時間は、あっという間に過ぎた。間違いなく、面白かったのである。しかし一方で、「見応えのある映画を見た」という満足感が今ひとつ感じられなかったのは何故だろうか。
首相暗殺犯という無実の罪を背負わされた主人公(堺雅人)が、仙台の町をひたすら逃げる。その逃亡を助けようとする大学時代の仲間たちとの関係の中で、主人公の青春時代が次第に明らかになる。この構成が巧い。
逃亡のスリルと、青春の思い出のノスタルジーが緊密に絡み合って、主人公をとりまく人間関係が鮮やかに浮かび上がっていく。そして、その人間関係こそが主人公の逃亡を助け、生きる希望になっていく。原作は伊坂幸太郎。殺人犯との出会いなど、唐突に思える場面や、主人公に都合が良すぎる展開も含めて、ストーリーがとてもよく出来ている。
だが、スケールが大きな話にもかかわらず、どうもチマチマとした青春劇というイメージが強くなってしまった。映画ならではのダイナミックな表現に乏しいのである。
「アヒルと鴨のコインロッカー」(2006)「フィッシュストーリー」(2009)と伊坂原作を手がけてきた中村義洋監督の語り口は非常にスムーズで、見ているうち、どんどん話に引き込まれていく。だが、いろんな場面がサラッと流されてしまって、映像に力が感じられない。首相暗殺のモブシーンも、堺雅人が仙台の街を走り回る逃亡シーンも、その迫力が今ひとつ伝わってこない。
中村監督の演出は決して悪くない。面白い話を邪魔しない絵作りで、見ている間は実に快調だ。しかし見てから時間がたつと、印象が薄くなってしまうのも事実。主演の堺雅人も、その元恋人役の竹内結子もいいと思う。こちらが期待し過ぎた面もあるのかも知れない。
十分に面白いことは認めながら、物足りなさも感じてしまった。「ジェネラル・ルージュの凱旋」(2009)という秀作を作り上げた中村監督と堺雅人、竹内結子のトリオなのだから、もっと贅沢な要求をしてもいいと思う。
(小梶勝男)