ゴーストライター - 福本次郎

まるでヒッチコックのようなタッチでじっくりと状況が染み通るのを待つ映像。(点数 80点)


(C)2009 R.P. FILMS – FRANCE 2 CINEMA – ELFTE BABELSBERG FILM GmbH – RUNTEAM III LTD

鉛色の重たい空、波高く荒れる海、不安を掻き立てる音楽…。現代風
のたたみかけるテンポではなく、まるでヒッチコックのようなタッチ
でじっくりと状況が染み通るのを待つ映像は、不可解で巨大な腐臭が
漂う事件に巻き込まれた主人公の感情をリアルに再現する。死者が残
したメッセージ、隠ぺいされた過去、そして戦争犯罪。映画は現代国
際政治のタブーを知ってしまった男が味わう恐怖を通じて、本当に恐
ろしいのは世界の仕組みが一部の組織に牛耳られていることであると
告発する。

【ネタバレ注意】

テロリストへの拷問容疑で隠棲中のラング英元首相の自伝を代筆する
ために米国の孤島に渡ったゴーストライターは、不審死した前任者が
ラングの経歴に齟齬を発見し、CIAとの深い関係に気づく。

妻と仲のいいはずのラングが実は秘書を愛人にしていたり、資料は一
切持ち出し不可だったり、ラングへのインタビューも歯切れの悪い答
えしか返ってこない。そんな執筆の妨げになる制約がゴーストライタ
ーを苦しめるが、彼は粘り強い取材と推理で一つずつ事実を明らかに
していく。

その幾重にも張り巡らされた伏線が国家的陰謀に結びついて行く過程
は、派手なアクションに頼らず、登場人物の表情の些細な変化がヒン
トとなる。見る者に謎を解く時間を与えてくれる間の取り方はミステ
リーの王道だ。

福本次郎

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