◆長旅を通じてポルトガル人の海への憧れをノスタルジックな味わいで浮き彫りにさせている(65点)
新大陸発見で有名なクリストファー・コロンブスの没後500年を機に製作された作品で、監督は現在101歳のマノエル・デ・オリヴェイラ。06年にコロンブスはポルトガル人だったという新説がマヌエル・ルシアーノ・ダ・シルヴァという歴史家によって発表された。これに触発されてオリヴェイラ監督は本作を撮り上げたのである。
第二次大戦後、ポルトガルから渡米した青年医師マヌエル(リカルド・トレパ)はコロンブス研究に熱心であり、出生の謎を秘めたコロンブスをポルトガル人だという自身の仮説を証明するべく奔走する。その後、教師のシルビア(レオノール・バルダック)と結婚し、夫婦でコロンブスの生地を求める旅をするのだが……。
コロンブス出生の謎を解明するための長旅を通じてポルトガル人の海への憧れをノスタルジックな味わいで浮き彫りにさせているのが本作の特徴の一つでもある。また、この長旅からは夫婦の絆の強さも感じられる。
また、後年のマヌエルとシルビアを監督本人と監督の妻マリア・イザベルが演じているのも大きなポイントである。
TVの芸術紹介番組を映画としてパワーアップさせているような感じすらするが、これが前衛的な出来栄えだと捉えることができる。とにかく作品そのものがユニークな存在だ。
(佐々木貴之)