◆見た目はハリウッドの雛形映画、だけど中身は……。(40点)
バディムービーというのは、いまやすっかりアメリカ映画のお家芸となっている。その多くは刑事もので、相棒の片割れはおしゃべりな調子者の黒人。そのマシンガントークに白人の主人公がうんざり顔で応対しつつも、決めるべきところは二人で決めるという友情アクション映画──。
そんな典型例を語ればそれだけでギャグになるような、お約束中のお約束。『コップ・アウト 刑事(デカ)した奴ら』はまさにそんな雛形に収まる映画……に、一見みえる。
NY市警の刑事モンロー(ブルース・ウィリス)とその長年の相棒ホッジス(トレイシー・モーガン)は、ミスにより1ヶ月の停職処分を食らった。これで大弱りなのがモンロー。別れた妻と暮らす愛娘の結婚式を前に、その費用のあてがなくなってしまったのだ。このままカネが用意できなければ、妻の再婚相手のいけ好かない大金持ちに父親面までされる羽目になる。そこで彼は、父の形見の超レアなベースボールカードを換金しようとするが、その寸前で強盗に奪われてしまう。
泣きっ面に蜂な刑事さんのドタバタ奪回劇。不死身の男ブルース・ウィリスがそんな役を演じていることの面白さと、相棒役にアメリカで大人気のコメディアン、トレイシー・モーガンが扮していることが話題のバディ・ムービーだ。
とはいえ、監督のケヴィン・スミスは一筋縄ではいかない作品ばかり作る毒持ちの鬼才。本作の中にも、典型的なお約束映画の方程式を、微妙に崩しまくる彼らしい演出カラーが見て取れる。
二人が精を出す事件が、野球カード探しというビミョーにチンケな内容なのもそうだし、監督の趣味としか思えないオタクじみた映画ネタのやり取りなどもそう。これをみて喜べる人は、マニアとまではいかないにせよ結構な映画バカであると自覚しよう。
ストーリーもギャグも、おまけに見た目もどこかチープな線を狙っているので、そのあたりをよく理解して挑むことが大切。いくら良くある「白人スターと黒人コメディアンのコンビによる刑事ドラマ」だからといって、大作アクション風味を期待すると、舞の海ばりの美しい肩透かしを食らう。この映画はアクが強く、万人向けでは決してない。
とはいえ、私としてはケヴィン・スミス監督らしさの面においても、以前ほどとんがった感じが無く、平凡の域を出ていない点が気になった。
じゃあいったい何を楽しみに見に行けばいいのよと言われると、いささか回答に窮するというのが正直なところである。
(前田有一)