◆冒頭から取り調べ室で延々と続く映画オタクのポールの名作のセリフの連打に、あっけにとられる(45点)
ジャンルは刑事アクションだが、何しろ監督がクセモノのケビン・スミスなので、オタク趣味全開のトボけた映画になっている。NY市警で長年コンビを組む刑事のジムとポール。性格は正反対だが仕事の息はピッタリの彼らは、捜査中のミスで停職をクラうことに。そんな時、娘の結婚費用のためにレアものの野球カードを売ろうとしたジムは、強盗に遭い、貴重なカードを盗まれてしまう。そのカードを追ううちに残虐なメキシコ系ギャング“ポー・ボーイ”がからむ殺人事件に巻き込まれてしまうのだが、同じ署内の別の刑事コンビも事件を追っていた…。
ハリウッドの定番である刑事もの“バディ・ムービー” だが、組み合わせは、アクション映画の名作「ダイ・ハード」のブルース・ウィリスと、スタンダップ・コメディー出身のトレイシー・モーガンという珍妙なものだ。しかも監督がオタク系のケビン・スミスとくるから、これはもうフツーのポリス・アクションではないと予想はつく。案の定、冒頭から、取り調べ室で延々と続く映画オタクのポールの名作のセリフの連打に、あっけにとられる。これが事件の重要な伏線かと身構えたが、物語はそこから、換金前に盗まれた超レアものの野球カードの話へ、さらに野球好きのレア物収集オタクのギャングとのからみになるが、謎のメキシコ人美女が鍵を握る殺人事件の本筋は、映画とも野球とは別モノなのだ。マヌケなコソ泥が出てきたり、美人妻の浮気を疑うポールの隠しカメラが登場したりもするが、これまた、ただのお笑いに終始する。いったい何がしたいのかよく分からないのだが、このトボけた味わいがケビン・スミスだと言われればそんな気も。事件の解決や悪党への裁きよりも、大切なのはあくまでも野球カードなのだ。ボケとツッコミよろしく、男2人のかけあい漫才を見ているかのように楽しめばそれでいいのだろうが、ポールのキャラが、愛情も友情もベタついているのが、どうにもいただけない。はたして換金すれば大金になるというレア物の野球カードは、ジムの手に戻るのか。そして愛する娘の結婚式で立派な父親役ができるのか。このオチだけは、なかなか洒落ていた。エンド・ロールの途中のワンシーンまで人を食ったようなシークエンスなのが、いかにもケビン・スミスである。
(渡まち子)