コクリコ坂から - 福本次郎

ノスタルジーに浸らず、さわやかな初恋譚で押し切ったところに好感が持てた。 (点数 50点)


(C)2011 高橋千鶴・佐山哲郎・GNDHDDT

好きになった相手は父の隠し子だった。そんな現実に直面し戸惑う高
校生。少年は気持ちをもてあまし少女の目をまともに見られない、少
女は少年への思いを抑えきれない。もう子供ではない、だからこそふ
たりは大人のふりをしようとする。一方で自分はまっすぐに生きてい
ると信じ、友人や同級生の前でもそうふるまっている彼らにとって、
父の不実は他者に知られたくない汚点。映画は安手のメロドラマのよ
うな状況に置かれた高校生たちが人生の試練に立ち向かう姿を描く。

下宿屋を切り盛りしながら高校に通う海は、学校の文化部部室・カル
チェラタン取り壊し反対運動で先頭に立つ俊と知り合う。海は俊が発
行する学生新聞を手伝ううちに彼に惹かれていく。

ふたりが偶然海の父が写った同じ写真を持っていたのがきっかけで、
俊は海が妹だと早合点するのだが、真相を知る大人は誰もいない。そ
れでも同じ目的のために力を合わせるうちに、恋人同士になれなくて
も“好き”という感情は大切にしようとわだかまりを解いていく。そ
のあたりのやり取りが、ぎこちなさの中にも背伸びした駆け引きなし
のストレートさで、高校生らしい思いやりも忘れていない。仲間とと
もに大人と戦い恋に胸を焦がせる物語は、青春の輝きに満ちている。

舞台となった1963年、世界は今よりずっとシンプルで、溢れる情報に
踊らされることもない。だが、ノスタルジーに浸らず、さわやかな初
恋譚で押し切ったところに好感が持てた。

福本次郎

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