◆お笑い番組で観られるようなコントに近い(80点)
諜報機関“コントロール”本部が犯罪組織“カオス”に襲撃され、全エージェントの顔や身元がバレてしまう。唯一敵にバレなかったマックスウェル・スマート(スティーブ・カレル)が分析官からエージェントに昇格する。憧れの役職をゲットしたスマートはエージェント86となり、整形手術をしたばかりの凄腕美女エージェント99(アン・ハサウェイ)とタッグを組んでカオスに挑む。
『007』シリーズのパロディーが満載の往年の人気TVドラマ『それ行けスマート』(65?70)のリメイク映画版。監督は、コメディーテイストを得意とするピーター・シーガル。
本作の面白さは、やはりコメディー描写と気合の入ったド派手なアクションシーンだ。コメディーに関しては、日本のTVお笑い番組で観られるようなコントに近いものがあり、ゆるやかなおとぼけギャグを随所に散りばめている。これが結構分かりやすく描かれているので、単純な面白さが味わえて笑わせてくれる。アクションシーンは、爆破やカーアクションといった見せ場を、迫力を追求して魅せつけてくれる。特にクライマックスは見応え抜群の出来栄えであり、ここでも笑いをしっかりと追求している点が素晴らしい。コメディーとアクションという二大要素の絡み合いが最高潮に達する瞬間は、強烈なインパクトを与えてくれると言っても良いだろう。
豪華なキャスト陣によるキャラクターも注目すべきポイントである。主役・カレルと準主役・ハサウェイ以外の脇役キャラの活躍は本当に面白い。凄腕スパイのエージェント23をプロレス出身のアクションスターであるドウェイン・ジョンソン(ザ・ロックから改名)が演じる。彼の近年の出演作は未公開だったが、本作で久々に日本のスクリーンに戻ってきた。それも単館系ではなくてロードショー大作としてだからファンにとっては嬉しく思えるはずだ。同じくプロレス出身で今も現役で活躍しているダリープ・シン(身長はなんと230cm!!日本ではジャイアント・シン名義で同じく230cmのジャイアント・シルバとの巨漢タッグで新日本プロレスのリングで暴れまわった。二人の仲は悪く、試合中に度々仲間割れしていた。)が敵役を好演。彼はシーガル監督のリメイク版『ロンゲスト・ヤード』でデビュー。プロレスラーが大挙出演しているこの作品で、当時日本でも人気者だった格闘家のボブ・サップと絡んでいたことが今でも忘れられない。本作では『ロンゲスト?』以上に彼のキャラクターを巧く描き上げることに成功しており、今後もシーガル監督作品の常連役者として活躍するような予感すらした。他にもアラン・アーキン、テレンス・スタンプ、ジェームズ・カーン、TVドラマ『HEROE』でお馴染みのマシ・オカが顔を揃えており、さらにビル・マーレイがカメオ出演している。
上映時間は110分。飽きさせないように工夫を施してはいるが、それでも少しダレてしまう部分があったことがマイナスであり、この無駄を省いていればもっと良かっただろう。結果的に言えば、本作は面白い作品であることに違いはないのである。
(佐々木貴之)