ゲットスマート|映画ジャッジ!批評家による口コミ評判辛口映画情報

ゲットスマート - 岡本太陽

60年代の米テレビシリーズを映画化。スティーヴ・カレルがスパイに扮する。（65点）

　アメリカで1965年から1970年まで放送されていたテレビシリーズ『それ行けスマート』。メル・ブルックスとバック・ヘンリー制作によるこのシリーズは007のヒットを受けたスパイパロディもので、お茶の間で人気を博した。その『すれ行けスマート』がハリウッドで映画化され今夏の注目策として公開に至った。タイトルは60年代当時と変わらず『ゲット・スマート（原題：GET SMART）』で、主演にスティーヴ・カレルが起用されている。

　米国諜報機関”コントロール”で調査員として働くエージェント86ことマックスウェル・スマートはスパイとして活躍することを日々夢見ている。しかし、スマートがスパイテストでハイスコアを取れるにも関わらず、コントロールの機関長は彼は現在の役割が彼には合っていると判断。そんなとき、コントロールがカオスという組織に侵入され、内部を破壊されるという出来事が起こる。それと同時に多くのエージェントも暗殺されたという情報が舞い込む。人手の足りなくなったコントロールで、機関長はスマートとやり手女スパイのエージェント99をパートナーとして組ませる事に。彼らの使命は「ロシアに発ち、誰がカオスに核兵器を供給しているのか」を突き止める事。スパイとしての経験のないスマートに不満を持つエージェント99。彼らは任務を遂行する事が出来るのか…？

　『ゲット・スマート』の監督を務めるのは『N.Y.式ハッピー・セラピー』や『50回目のファースト・キス』等、大ヒットコメディを世に送り出しているピーター・シーガル。『ゲット・スマート』もその流れに乗る事が出来るか！？

　出演者は、まず主人公マックスウェル・スマートにスティーヴ・カレルが扮する。昨年のサマームービー『エヴァン・オールマイティ』で興行的にコケてしまった彼だけに、今回の作品は期待が掛かる。スマートのパートナー、エージェント99に扮するのは『プラダを着た悪魔』のアン・ハサウェイ。この映画の中ではタイトなドレスやカッコいいスーツ等を着こなし、彼女の見せ場満載だ。美しさも洗練されて、彼女のファンには最高の映画かもしれない。

　また、"コントロール"のナンバーワンスパイのエージェント23にはザ・ロックことドゥエイン・ジョンソンが扮する。最近は俳優としての仕事が著しく忙しい彼、筋肉ムキムキのマッチョでもシュワちゃんよりは役の幅が広いのがその理由だろう。コントロールの機関長には『リトル・ミス・サンシャイン』でアカデミー助演男優賞を獲得したアラン・アーキンが扮する。クセのある機関長にぴったりだ。その他、テレンス・スタンプ、ジェームズ・カーン、アメリカの大ヒットテレビシーリーズ『HEROES』のヒロことマシ・オカ等が出演している。そしてカメオでビル・マーレーが出演していることが嬉しい。どんなかたちで出演しているのかはお楽しみだが、とても素敵な役だ。

　予告編がリリースされてからずっと楽しみにしていた、この『ゲット・スマート』。シュールな笑いばかりで彩られている点が素晴らしい。人によってはガハハと大笑いしてしまうかもしれないが、基本的にはクスクス笑わせられてしまう感じが憎い。そんなシュールな雰囲気はスティーヴ・カレルの得意分野でうまく役にハマっている。今回彼は小さなボウガンに変形したりする、ある万能な特殊武器を使用するのだが、いたるところで使用されるその武器に注目だ。

　『ゲット・スマート』は基本的にはコメディ映画。しかし、スパイ映画なのでアクションも見どころ。特にラストは90年代のシュワちゃんのスパイコメディ『トゥルー・ライズ』顔負けのアクションシーンが用意されている。笑いとアクションでバランスを取っているが、上映時間は111分で、シュールな笑いでその長さを埋めるのはなかなか困難。どうしても中だるみしてしまう。約90分程度でスピード感を出せば尚良かったはずだ。

　それから、車や音楽がコマーシャルとして登場している点が非常に気になった。特に、マドンナとジャスティン・ティンバーレイクの「4 Minutes」が物語の中でもエンディングでも登場し、日本のドラマの戦略の様だった。『ゲット・スマート』は笑いとアクションのバランスの取れたなかなか刺激的な映画ではあるが、ラストは続編の可能性すら臭わし、まず第一に金儲けを考えたコマーシャル映画で、純粋に面白い映画を作ろうというという意思はあまり感じられなかった。