ケンタとジュンとカヨちゃんの国 - 渡まち子

◆映画のテイストはアメリカン・ニューシネマに近いが、それゆえに悲劇的な結末がデジャヴのようにまとわりつく(65点)

 希望と絶望がブレンドされた青春映画は、“今”をブチ壊したものだけがたどりつける場所を目指すロード・ムービーだ。孤児院で育ったケンタとジュンは、解体現場でひたすら壁を壊す“はつり”という不毛な仕事をこなしながら日々をやり過ごしている。安い賃金、過酷な労働、職場の先輩の陰惨ないじめ。怒りが沸点に達した彼らは、先輩の愛車を叩き潰し、ナンパしたブスな女の子・カヨちゃんを連れて、ケンタの兄がいる北海道に向けて逃避行の旅に出る…。

 現状を壊した先に何があるか知りたい。この映画のテイストはアメリカン・ニューシネマに近いが、それゆえに悲劇的な結末がデジャヴのようにまとわりつく。ケンタもジュンも社会の底辺で生きる若者だ。彼らには金も学歴も目標もない。絶望でがんじがらめで身動きできない二人は愛憎半ばの関係を保ちながら支えあっている。いつも誰かをバカと言い、「お前とは違う」「違うって言うな」と叫ぶ彼らの存在証明はすべてをぶっ壊すことしかないのだ。共に旅をすることになるカヨちゃんもまた、男と寝ることでしか自分の存在を確かめられない女の子で、世間一般の常識から見れば、どうしようもなくバカでだらしがない。このカヨちゃんを、母性の象徴のように描くのが興味深い。北に向かう旅の中で、ケンタとジュンはカヨちゃんと寄り添って眠るときだけ、安らいだ表情を見せる。そこは安心できる唯一の場所でありカヨちゃんのモノローグ「それでも愛されたい」との言葉がケンタとジュンにも重なるからなのだ。全編寒々とした映像が続くが、わずかな希望にすがって訪ねた兄の拒絶に遭った後の北国の風景は不思議なほど開放感がある。旅の終わりに一人前を向くカヨちゃんを演じる安藤サクラの表情が絶品だ。今まで映画やTVドラマでアイドルのような役ばかり演じてきた松田翔太が、圧倒的な気迫で演じていて素晴らしい。本作は、彼の役者としてのターニングポイントになりそうだ。

渡まち子

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