グーグーだって猫である - 福本次郎

吉祥寺という人情味あふれる繁華街と大きな公園が隣接する街で、人々のリアルな感情とファンタジーが交差する世界を描こうとしているが、語り部の視点が定まらず中途半端。テーマが定まらないまま散文的になってしまった。(30点)

 仕事に追われ殺伐とした毎日を過ごすヒロインが、疲れた心を猫に癒してもらう映画にする予定だったのか。だが、猫の愛らしさを前面に出すわけでもなく、マンガ家の創作の苦悩でもなく、アシスタントが見たマンガ家と猫の交流という構成にもなっていない。吉祥寺という人情味あふれる繁華街と大きな公園が隣接する街で、人々のリアルな感情とふと夢に見るファンタジーが交差する世界を描こうとしているが、語り部の視点が定まらず表現も中途半端。結局テーマが定まらないままストーリーがあまりにも散文的になってしまい、何が言いたいのかわからなかった。

 人気マンガ家の麻子は読み切りを仕上げた直後に愛猫を亡くし、その悲しみから極度のスランプにおちいる。その後、新しい子猫・グーグーを飼い始めてから新しい出会いや新作の構想が次々と浮かび元気を取り戻す。

 若くしてデビューし復刻版全集も出版されるほどの大作家で、作品は多くの読者に勇気を与えてきた麻子。しかし、本人は自分のマンガの登場人物たちのような波瀾万丈な人生や大恋愛とは無縁で、ひたすらケント紙に向かう日々だったはず。入院先の病院でファンの看護婦に声をかけられたとき、私の作品はそれほど私を励ましてくれない、というようなことを言うが、そこに天才ゆえの孤独がにじみ出ていた。そして胸の内を素直に打ち明けられるのは猫だけだったのだろう。いつも遠くを見るような眼でほとんど喜怒哀楽を表に出さない麻子の気持ちが唯一表出するシーンで、小泉今日子は見事な存在感を示していた。

 一方で、アシスタント連中の計画や井の頭公園で出会った男などのエピソードは極めて不自然で、物語の興をそぐばかり。特に「老人体験」中に恋人の浮気を見つけたアシスタントが大立ち回りを演じるが、笑いを取ろうという意図が全く裏目に出ている。無意味に楳図かずおまで引っぱり出し、さらにドツボにはまるという悪循環。原作の知名度に乗っかっただけの安易な企画だった。

福本次郎

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