毎日を大切に生きる主人公(75点)
犬童一心は悲しみを含んだ幸福を描くのが本当に上手い。繊細で内向的な天才漫画家の麻子は愛猫のサバが息をひきとったことがショックで漫画が書けなくなるが、ペットショップで出会った子猫グーグーとの触れ合いで元気を取り戻していく。猫の死や、予想外の自分の病に悩みながらも、周囲の思いやりによって毎日を大切に生きる主人公の姿が、浮遊感漂う演出で語られるのが心地良い。サバとグーグーの2匹の猫の愛らしさは最高で、思わず猫と同じ目線で物語を追うと、幸せはその高さにこそあると思えた。この映画を見た後は、何気ない日常がきっといとおしくなる。
(渡まち子)