善悪がこれほど明確ならば、とっくに世界は平和になっているだろうと夢想してしまう作品。(点数 70点)
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宇宙の遥か遠くに星々を守る数多の守護者がいた。その名はグリーン・ランタン。
全生物の意志の力を身にまとい、超人的な力で“恐怖の力”に対抗する。
意志の力は緑色をしており、それが生命のエネルギーなのだ。
各星系を守るグ リーン・ランタンに初めて地球人が抜擢されることになるのだが、その候補者は軍需産業のテストパイロット。
「アイアンマン」もそうだったが、正義 を体現するのが軍事関係者という、アメリカ人の屈託のない正義に対する思い込みが見え隠れし
て、大国の拮抗したパワーバランスの上でたくみに立ち 振る舞っていた日本人としては観れば複雑な気分になるのかもしれない。
自分が見落としただけなのかも知れないが、この映画を観て、セリフに一言も「正義」という言葉が出てこなかったように思う。
あるのは光をまとう “意志の力”と闇を体現する“恐怖の力”。
こういう二元論は、アメリカ人は好きだ。
ハリウッドはほとんど確信犯的にこのメソッドで正義を語っている。
正義不在のこの時代に正しさの意味を問うこの作品は、もはや世界から懐疑の目で見られるようになったアメリカの正義を性懲りも無く繰り返している点は食傷気味である。
こういう話型をアメリカ人は好んで採用するが、一様でない正義を描いたクリストファー・ノーラン監督による「バットマン」 のほうがリアルな現実を反映していて奥が深い。
そういう混沌とした現代のせいか「グリーン・ランタン」では「正義」という言葉が使われなかったの も、使えばすぐさま陳腐化することを
製作者側が意識していたからだろう。
難しい時代になったものだ。
ただ、こういう説話的なストーリーは大人には物足りないかもしれないが、世の中を単純に理解したい人には満足する内容かもしれない。枝葉末節を除けば、物語の核になる要素は、「善と悪の二元 論」、「超人的パワー」、「恋愛」に集約される。
主人公の正義の源が思慕する女性への想いというのも、ハリウッドの使い古された錬金術だったのだ が、そもそも戦の根源的な理由のひとつは女性の奪い合いに端を発しており、“女のために戦う”という心理は人類のプリミティブな感情であって、この動機は未来永劫変化することは無い。
先の大戦で日本とアメリカの明暗を分けたのも、国のために戦った者と、愛するもののために戦った者のマイン ドセットにあったように思う。
アメリカはこの信念に基づき世界の頂点に君臨し、そして牽引し続けてきた。
その確信がある限り「グリーン・ランタン」のような作品はこれからも生み出されていくのだろう。
(青森 学)