グリーン・ゾーン - 福本次郎

◆ハンディカメラの映像は激しく揺れ、戦場の緊迫感を再現する。それは自動小銃を手に銃弾をかいくぐり疾走する兵士が知覚する感覚のリアリティ。主人公の息遣いだけでなく、心臓の鼓動までが聞こえそうなテンションの高さだ。(70点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 街灯も乏しい裏街でターゲットを追い、時に銃撃戦を交えつつ走り抜ける。ハンディカメラで撮影された映像は上下左右に激しく揺れ、戦場の緊迫感を再現しようとする。それはペンやカメラを持ったジャーナリスト的な第三者の目ではなく、実際に自動小銃を手に銃弾をかいくぐり疾走する兵士が知覚する感覚のリアリティ。主人公の息遣いだけでなく心臓の鼓動までが聞こえてきそうなテンションの高さは、おのずと見る者に彼の不安や恐怖、それらを克服しようとする昂奮と冷静さを伝える。

 停戦後のイラクで大量破壊兵器を探すミラー准尉は情報源の信ぴょう性に疑問を持つ。ある日イラク人・フレディの通報で反米グループと思われる集会を急襲、そこでイラク軍高官・ラウィ将軍の姿を見つけるが取り逃がしてしまう。

 「イラクが大量破壊兵器を持っている」という情報こそがイラク戦争の大義名分。物語はその欺瞞に真っ向から勝負を挑む。ブッシュ政権のネオコンを喜ばせるために捏造する国防総省の高官・パウンドストーンと、「破壊兵器は見つからない」と現実的なCIA局員・ブラウン。米軍司令部内での主導権争いにミラーが巻き込まれていく過程で、イラク戦争自体が壮大な嘘に踊らされた茶番劇だったことを暴いていく。

 ラウィと接触しようとするブラウンとミラー、隠ぺいのためにラウィを殺そうとするパウンドストーン。もはや敵はイラクではなく味方の中にいる。映画は最前線で命がけの任務につく兵士の感情とともに、司令部内での駆け引きに多くのスポットを当てイラク戦争の真実に迫ろうとする。ディテールの積み重ねで、フィクションでありながら「事実」のようなスタンスをとるポール・グリーングラス監督の姿勢は「ユナイテッド93」に通じ、たったひとりの男の功名心のせいで無駄死にした多くの兵士や市民の無念を代弁するのだという義憤すら感じる。サダム・フセインが人道上の罪で死刑になったならば、パウンドストーンのモデルとなったダグラス・フェイスなども同罪のはずなのに。。。

福本次郎

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