クローズド・ノート - 福本次郎

◆かなえられた願い、届かなかった想い、さまざまな気持ちが素直に綴られた日記。しかし、未熟な他人にのぞかれることで陳腐な共感となってたちまち色褪せる。映画は幼稚なミステリー仕立ての上に恋愛ごっこを重ね塗りする。(30点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 かなえられた願い、届かなかった想い、さまざまな気持ちが素直に綴られた日記。それは他人の目を気にすることなく自分を見つめ直す作業だ。文章にすることで考えと感情を整理し、丁寧に万年筆を走らせる。うれしかったことも悲しかったことも一呼吸おくことで冷静になり、やがてそれは思い出という美しい財産に昇華される。しかし、その心の足跡も、未熟な他人にのぞかれることで陳腐な共感となってしまうとたちまち色褪せる。さらに映画は幼稚なミステリー仕立ての上に恋愛ごっこを重ね塗りするという失敗を繰り返す。

 新居に引っ越した香恵はクローゼットに忘れられた日記を見つける。読み進むうちに伊吹という持ち主の前向きな生き方に力を与えられる。一方、突然彼女の前に現れた石飛という男に香恵は魅かれはじめる。

 香恵は、伊吹の日記に書かれた小学校での出来事や隆という男のことに想像を膨らます。特に隆との関係が恋に発展するのかどうか、隆とはどういう男なのか気になって仕方がない。一方の石飛は香恵の前をうろちょろしながらも、その正体は不明。しかし出会いから再会といったプロセスがあまりにも稚拙なため、観客には石飛が隆であるということは早々にばれてしまい、知らぬは香恵ばかりという状況。そもそも日記を忘れて引っ越すバカなどいるはずはなく、引越しは日記の存在を知らない人間の手で行われた、つまり日記の主は死んだということは簡単に予想できてしまうのだ。もう少しましな設定を考えられないものだろうか。

 「あきらめなければ願いはかなう」。伊吹は日記にそう記す。行定監督は前作「遠くの空に消えた」でも「信じることで願いはかなう」と主人公に言わせている。しかし、「すばらしい映画を見たい」という観客の願いは、この作品でもかなえられなかった。この監督を信じてあきらめずに新作を見続ければ、いつかは面白い作品に出会えるのだろうか。。。

福本次郎

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