キツツキと雨 - 小梶勝男

「南極料理人」の沖田修一監督が描く、ゾンビ映画の監督と木こりが心を通わせていくコメディー。映画作りの熱気や楽しさが伝わってきて、観客を幸せな気分にさせてくれる(点数 78点)

 ゾンビ映画の撮影隊が田舎へロケに出かけ、木こり(役所広司)と出会う。木こりは撮影隊に半ばむりやり手伝わされるうち、映画作りに夢中になっていく。一方で、撮影隊の若い映画監督(小栗旬)は決断力がなく、映画作りから逃げ出したくて仕方ない。だが、木こりと心を通わせるうちに自信を取り戻していく。

 木こりと映画監督が並んで座る場面がある。ただ、並んで座っているだけだが、作業着姿の役所と、今どきの若者らしいナーバスな雰囲気の小栗が、森の中で並んでいるという絵は、何だかとてもユーモラスだ。異質なものが、当たり前のように並んでいるのがおかしい。住む世界が違う2人が、お互いにどこかで惹かれながらも、相手の様子を伺うように話すのは、恋愛映画を見ているようでもある。

 沖田修一監督が最も影響を受けた映画は、昨年急逝した森田芳光監督の「家族ゲーム」だという。確かに沖田監督の作品には、森田監督作の面影がある。ただ、人柄が影響しているのだろうか、才気に溢れていた森田作品とはちょっと違って、才気より温かみの方が前面に出ている。その温かみが、ユーモラスな雰囲気を作っているのだろう。

 沖田監督は斜めからのショットが嫌いで、正面から撮ることが多いと話す。それは「家族ゲーム」から受けた影響の一つだという。「家族ゲーム」には、家族が居酒屋のように横一列に並んで食事をとる有名な場面がある。そこにはユーモアよりも、お互いに向き合うことを避けているような、冷たい緊張感が漂っていた。

 木こりと映画監督が並ぶ場面も正面から撮影されているが、2人を見つめる目線はとても優しい。空気を支配しているのは緊張感ではなく、温かみだ。それは沖田監督の持ち味なのかも知れない。

 木こりとゾンビ映画の監督という組み合わせは突飛だが、両者が出会ってからは、それほど突飛なことが次々と起こるわけではない。村人たちは総出でゾンビ映画の撮影に協力するようになり、やがて連帯感が生まれていく。本作に「村人役」で出ているエキストラは、実際にロケ地に住んでいる方々で、映画作りに熱心に協力してくれたという。現実の映画作りと、映画の中の映画作りが二重写しに重なっていったのだ。映画監督を演じる小栗も、次第にそれを演出する沖田監督に似ていったという。異質な者同士の連帯が、映画作りの熱気や楽しさとなって、観客も巻き込んでいく。そうした幸せな雰囲気も、映画を温かいものにしている。
 

小梶勝男

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