キッチン ~3人のレシピ~ - 佐々木貴之

◆最初から最後まで良いイメージで描かれたドラマ(60点)

 天真爛漫で純粋なモレ(シン・ミナ)と証券マンのサンイン(キム・テク)は、幸せな新婚生活を送っている。ある日、モレは閉館時間外に忍び込んだ現代アートの美術館で不思議な青年ドゥレ(チェ・ジフン)と出会い、関係を交わしてしまう。その後、会社を辞めてフランス料理店をオープンしたいとモレに打ち明けたサンインが連れて来たシェフが、なんとあのドゥレであった。ドゥレはサンインに料理を教え込むためにモレとサンインの家に住み込むこととなり、三人の共同生活が始まるのだが、これが三角関係の始まりでもあった……。

 女一人と男二人の三角関係なんて良くありがちで珍しい話でもない。でも、この手のドラマ(平日の昼メロドラマと言えば分かり易いかも!)でよく観られる壮絶な修羅場をはじめとするドロドロとした陰惨さや観ていて腹立たしく思えるようなドラマではない。

 サンインとモレ夫妻宅の陽光が射しかかってきらめくキッチンや部屋のオシャレなインテリアが鮮やかな雰囲気を醸し出し、テーブルに並べられる数々の美味しそうな料理が並べられたりという具合に三角関係ドラマを忘れさせるような明るいイメージが作品全体を彩り、観る者に良いイメージを印象付けていることが大きなポイントだと言える。

 その反面、モレとドゥレの関係を知ってしまったサンインがドゥレと対立してしまう後半部分は、三角関係ネタさながらの描写となっており、この手の作品が観る者に与えるような辛さ等も感じられる。だが、前述したような良いイメージが印象深いためなのか、観ていて感じられる辛さやイライラはやや弱めだ。ラストも海岸で美味しそうな料理やキレイな自然美を魅せており、最初から最後まで良いイメージで描かれたドラマとして仕上がっている。

 本作は09年5月公開予定であったが、公開直前にドゥレ役のチェ・ジフンが合成麻薬MDMA(エクスタシー)を使用したとして逮捕・書類送検されたため、公開延期になってしまった。その後、執行猶予判決が言い渡され、本人に常習性がないということで無事に公開されることになったといういわく付きの作品だ。

佐々木貴之

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