カールじいさんの空飛ぶ家 - 福本次郎

◆運命的な出会いから静かな別れまで、主人公のつつましくも幸せだった人生を振り返るプロローグが涙を誘う。数十年にわたる彼と妻と家の歴史がほんの数分にまとめられ、思い出に生きるしかない老人の寂しさを饒舌に物語る。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 運命的な子供時代の出会い、同じ夢を追ううちに恋に落ち、結婚して廃屋を買い取って修理し、そこで共に歳を取り、やがてふたりだけの暮らしも死によって引き裂かれてしまう。主人公のつつましくも幸せだった生涯を振り返るプロローグが涙を誘う。いつの間にか周囲は再開発の波にさらされ、今では世の中の変化についてゆけず、孤独の中で頑固に心を閉ざし、さらに偏屈になっている。そんな彼の数十年にわたる妻と家の歴史がほんの数分にまとめられ、思い出に浸るしかない老人の寂しさを饒舌に物語る。

 ひとり暮らしのカールは老人ホームに収容されそうになるが、無数の風船で家ごと空に飛び立つ。目的地は昔妻のエリーと行く約束をした南米のパラダイスフォール。飛び立った家にはラッセルというボランティアの少年が同乗、滝を目前に家は荒れ地に不時着する。

 徒歩での滝までの道中、カールは決して家にくくりつけられたロープを放さない。幻の巨大鳥をめぐって猟犬に追われても、マンツという少年時代に憧れた探検家に命を狙われてもその手はしっかりとロープを握ったままだ。彼にとってこの家は愛するエリーの記憶そのものだからだ。だが、旅の途中で知り合ったケヴィンを救出するためにエリーと買いそろえた家具を捨て、ラッセルを守るために家そのものも手放してしまう。家など所詮はモノでしかない、それよりも今助けを求めている者たちのために役に立てようとするカールの気持ちの変化が印象的。彼の生きる道がエリーという過去よりもラッセルという現在に向いた瞬間だった。

 冒険から無事戻ったカールとランディはすっかり父子のような関係になっている。子供に恵まれなかったカールは父親としての時間を取り戻すかのように、父が不在気味のランディは生き方の手本を求めるかのように。いくら年をとっても未来に目を向けている限り人生は有意義なものであり続けることをこの映画は教えてくれる。ただ、それはカールほどの元気があればの話で、たいていは加齢とともに体力も衰え気力を無くしていく現実をこの作品はもう少し考慮すべきだろう。。。

福本次郎

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