カールじいさんの空飛ぶ家 - 小梶勝男

◆ピクサー初の3D作品だが、3Dで見る意味は余りない。カールじいさんが風船で空飛ぶ旅に出るまでがセンチメンタルでとてもいい(73点)

 ピクサー初の3D作品を、字幕、3Dで見た。結論から言って、本作を3Dで見る必要はないと思う。余り飛び出さないし、奥行きもそれほど感じなかった。むしろこの内容であれば、3Dメガネを外して2Dでじっくり見た方が良いだろう。

 最愛の妻エリーを失った老人カールが、自宅に無数の風船を付けて空を飛び、冒険の旅に出る物語だが、冒険旅行に出るまでがとてもいい。

 冒険好きなエリーと出会った子供のころ。2人で冒険の夢を語った秘密基地の廃屋。そしてエリーとの結婚。秘密基地の廃屋を改築した新居。年老いた2人。エリーの病気と死。誰もが通り過ぎる人生が、切々と描かれる。ここですでに泣けてしまう。アカデミー短編アニメーション賞を受賞した「つみきのいえ」のような感動があるのだ。

 だが、思い出の家とともに冒険に出てからは、ごく普通のアクションになってしまった。もちろん、それはそれでよく出来ている。霧に覆われた秘境の描写、巨大な怪鳥、飛行船での手に汗握るアクションなど、さすがピクサーだ。完成度は素晴らしい。老人と、空飛ぶ家に乗り合わせた少年との心の交流も、きちんと伝わってくる。実に良く出来ていると思う。

 しかし、アクション場面に3Dならではの表現が乏しい。もっとダイナミックな飛び出す映像を期待していたのだ。立体だと思うと何とも物足りない気持ちになってしまう。

 センチメンタリズムからアクションへ、という流れは自然で、泣けて笑える良作だと思うが、物足りなさも残る。カールじいさんの妻への思いが後半、どんどん希薄になっていく感じがあるのだ。そういうものかなあ、と思ってしまった。

小梶勝男

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