カンニバル・マン 精肉男の殺人記録 - 小梶勝男

◆1972年スペイン製ホラーの米国編集版である。日本では未公開で、これまでソフト化もされていないという。余りの残酷描写に世界中で公開中止が相次ぎ、映画館では「嘔吐用パック」が配られたとされるが、今見ると、それほど過激な描写があるわけではない。だが、全体にどうにも奇妙な雰囲気が漂っていて、それが一種の「味」になっている(66点)

この映画は劇場未公開映画です。評価の基準は未公開映画に対してのものとなります。

 冒頭、精肉工場で牛から血がドクドクと流れる場面が、ドキュメンタリーのように映し出される。ここで何だか嫌な感じになるのだが、この「嫌な感じ」は、ラストまで続くことになる。工場で働く主人公マルコス(ヴィセンテ・パラ)は恋人とデート中、タクシー運転手とトラブルを起こし、つい殴ってしてしまう。後になって、運転手が死んだことを知った恋人が、主人公に自首を迫る。またしてもつい恋人を殺してしまった主人公は、さらについ兄を殺し、兄を探しに来た兄の恋人をつい殺し・・・・と、最初の殺人を隠すため、何となく成り行きで次々と殺人を重ねてしまう。そして死体の処分に困り、精肉工場の牛の肉に混ぜるようになる。

 人間離れした殺人鬼の話はよくあるが、本作が異様なのは、主人公が普通の人間であることだ。殺したくて殺すわけではない。嘘に嘘が重なっていくように、悩みながら仕方なく、しかしメチャメチャに殺人を重ねていくのである。牛の肉に混ぜるのも、死体の隠し場所がなくて仕方なくやっていることなのだ。工場の肉を使った料理に吐きそうになってしまうように、主人公はどんなに残酷な殺人を続けても、いつまでも正常な感覚を失わない。それがブラック・ユーモアでもなく、いわゆるホラーでもなく、記録映画のように淡々と描かれる。そこにどうにも奇妙なリアリティーを感じてしまう。殺人シーンも派手ではないが生々しい。女の首を切る場面など、1972年当時の特殊効果としてはよく出来ている。

 そして、冒頭から同性愛者らしき男が登場するのだが、話の流れにどう関係してくるのか全く読めない。この男が主人公に次第に絡んでゆき、ある意味驚きのラストにつながっていく。カット割のぎこちなさは多分、ヘタクソなだけだと思うが、それも含めて不気味な雰囲気を作り出しているのが面白かった。半分やけになって人を殺しまくる主人公の気持ちは、分からなくもない。一般向けの作品ではないが、この味は捨て難い。

小梶勝男

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