カラフル - 福本次郎

カラフル

© 2010 森絵都/「カラフル」製作委員会

◆潔癖で純粋、誰よりも深いところを見つめていた少年は、それゆえ世間を拒絶し、孤立し、きれいごとでは済まされない人間の営みに失望して命を絶つ。映画は彼の肉体に入った魂を通じて、人はみな支えあって生きていると訴える(50点)

 自己認識できているのに、誰なのかを思い出せない“意思”が世俗に返される。生き返ったけれど、どうリアクションすればいいのかわからない。手探りで周りの人々とかかわっていくうちに、人と人との距離感をつかんでいく。潔癖で純粋、誰よりもいちばん深いところを見つめているような少年だった元の肉体の持ち主は、それゆえ世間を拒絶し、孤立し、きれいごとでは済まされない人間の営みに失望して命を絶った事実が明らかになっていく。映画は、そんな少年の魂の再生を通じて、人はみな支えあって暮らしていると訴える。細密に再現された町並みや室内などの背景が強烈なリアリティを生み出している。

 天国の入り口で精霊に呼び止められた<ぼく>の魂は、現世に戻って修行しなおせと命じられ、自殺したばかりの中学生・真の体内に戻される。両親や兄となじめず、学校でも友達がいなかった真に代わって、<ぼく>は新しい人生を始める。

 <ぼく>は記憶をなくしているのに、なぜか家族の優しさに過剰反応する。死ぬ前の真が家族を軽蔑していたのは仕方ないが、それは<ぼく>には影響を与えないはず。反面、学校では友人を積極的に作り、いじめられっ子だった真とは違うキャラになっている。唱子という女子には性格が変わったのを見抜かれるが、真とは関係ないと思っている<ぼく>は自分らしくあろうとする。つまり家では真らしく振る舞い、学校では別の真を演じる<ぼく>。特に母親に対して、不倫していた彼女が触れたものには一切手をつけず、徹底的に傷つけて復讐するのはなぜなのか。これではまるで、真の感情を<ぼく>が知っているかのようだ。一方で売春している後輩のヒロカには甘い態度をとり続ける。このあたりの<ぼく>の気持ちの揺らぎが非常にリアルだ。

 やがて<ぼく>も、家族がいかに真を心配し、真の態度に心を痛めていたかに気づく。不安定な日々に苦しんでいるというヒロカの言葉通り、苦くて甘い今を生きることが、中学生にとってはいかにエネルギーを要するか。一見気まぐれに映る真=<ぼく>の心は、器用に立ち回れない彼の生きづらさの発露。映画はそんな “弱さ”すら個性ととらえて、すべての悩める人々に免罪符を与えてくれる。

福本次郎

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