カタコンベ - 福本次郎

◆手持ちカメラの微妙なぶれでヒロインの不安と混沌を表現し、不気味な音楽と大げさな効果音で驚かせる手法に加え、MTV感覚の短いカットと映像にビートの利いたサウンドを重ねるという、ホラーとヒップホップの融合を試みる。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 うずたかく積み上げられた人骨のトンネル。壁には頭蓋骨が埋め込まれ、闖入者を暗黒の穴と化した眼窩で見つめる。パリの地中に人知れず張り巡らされた地下墳墓、通路そのものが冥界となっている迷路で、ヒロインは追われただひたすら逃げ回る。映画は、フラッシュライトや手持ちカメラの微妙なぶれで彼女の不安と混沌を表現し、不気味な音楽と大げさな効果音で驚かせる手法に加え、MTV感覚の短いカットとビートの利いたサウンドを重ねるという、ホラーとヒップホップの融合を試みる。

 姉・キャロリンにパリへ呼ばれた米国人ヴィクトリアはカタコンベで開かれるパーティに招待される。そこで迷子になったヴィクトリアはキャロリンに助けられるが、カタコンベに住むという山羊面の殺人鬼に追われる。

 精神安定剤に頼り、フランス語が分からない、飛行機でも不眠症で幻覚も見る。さらにキャロリンと彼女の友人たちは呪われた話を聞かせることでヴィクトリアの神経をいたぶる。そんなヴィクトリアのディテールを描くことで、心理的に追い詰められた状態の彼女の感情がいつ爆発するかわからないというスリル。山羊男に襲われ、恐怖を抱えながら当てもなく逃げ回るうちに泣き叫んでも、決してあきらめない。そんなタフな米国娘のスピリットがよく表現されている。

 彼女は逃走中に得た情報から危機的状況の回避法を考えるわけでもなく、張り巡らされた伏線があるわけでもない。ところがそのあたりの脚本の弱さが最後のどんでん返しに生きてくる。結局、すべてはキャロリンたちの仕組んだいたずら、21世紀に幽霊も殺人鬼も現実にいるわけはないというオチがスマートだ。その上で精神的に限界に来ていたヴィクトリアがキャロリンと友人全員を殺してしまう。殺人鬼の存在を否定していた者が、度が過ぎた悪ふざけで無垢な娘を殺人鬼にしてしまうという皮肉。このエスプリの効いたラストには思わずうなった。。。

福本次郎

【おすすめサイト】