緊張感に満ちたインタビューの数々は非常に見ごたえがある。(点数 50点)
(c)2010 NUCLEAR DISARMAMENT DOCUMENTARY, LLC.
東西冷戦時は米ソ両陣営の核兵器が全面戦争を回避する“抑止力”と
して機能していたが、21世紀のテロリストたちは使用が前提で交渉の
余地はない。映画は、オッペンハイマー博士に始まる原爆の歴史、旧
ソ連諸国の杜撰な核管理とパキスタンや北朝鮮によってカジュアル化
された核兵器を取り巻く環境を追って、歴史上類を見ないほどの核の
脅威にさらされている「現在」の危うさを訴える。元首脳クラスから
工作員まで、緊張感に満ちたインタビューの数々は非常に見ごたえが
ある。
【ネタバレ注意】
第二次大戦中に開発された原子爆弾、ソ連崩壊後は工場労働者でさえ
簡単に濃縮ウランを盗みだせるほど緩いセキュリティと、カーン博士
の暗躍でパキスタンですら保有できるまでになる。
いざという時には自爆も辞さないアルカイダ系テロリストにとっては、
持っていると思わせるだけで米国をはじめとする先進諸国を震え上が
らせることができ、同様の効果を北朝鮮も狙っている。「サダムが破
れたのは核弾頭を持っていなかったから」という言葉はキム・ジョン
イルの背中を押すには十分すぎる効果を持ったはずだ。
この作品はオバマ大統領の「核なき世界をめざす」プラハ宣言に応呼
しているのだろう。高邁な理想の陰で核兵器を巡めぐる現実は甘くな
いのは誰もが知っている。それでも「まだ世界は変えられる」という
人間の理性を信じる姿勢は救いをもたらしていた。
(福本次郎)