藤原竜也、天海祐希が好演(60点)
人生一発逆転。そんな上手い話は疑ってかかるのが普通だが、才能も目的もなく生きる主人公はヤバい夢にすがりつくしかない。自堕落な毎日を送る26歳フリーターのカイジは、多額の借金を帳消しにするため金融会社の女社長・遠藤の話に乗る。ある秘密の船に乗船し、負け組の男たちを集めてジャンケンのような単純な勝ち負けを競う勝負に参加。なんとかクリアするが勝負は終わりではなく、それは一握りの金持ちが仕組んだ残酷なゲームの序章にすぎなかった。非日常的な状況の中でチャンスをものにすべく奮闘する人間たちを描いていく。
今の世の中、格差はもはや常識だ。単純なゲームでそれを逆転しようという発想は安易に見えるが、案外そこには真実がある。単純だが究極の心理戦を勝ち抜くためには、状況を把握し、相手をみつめ、自分をみつめ、さらに運と度胸を必要とする。文字通り命懸け、ギリギリのプレッシャーに耐えることが、負け組から脱する唯一の方法なのだ。主人公カイジを演じる藤原竜也、女社長の天海祐希、共に好演。この二人、一人は舞台仕込み、一人は宝塚出身と実力は折り紙付きなのに、なぜか映画では光らないことが多いが、それは演じる役が合っていないため。本作の物語のアブノーマルな状況が、彼らの演技の質にピッタリとフィットした。ただ原作漫画とはかなり異なる雰囲気なので、原作ファンには違和感があるだろう。
(渡まち子)