カイジ2 人生奪回ゲーム - 青森 学

今回もカネをめぐる人間の喜怒哀楽が巧く描かれている。(点数 80点)


(C)福本伸行・講談社/2011「カイジ2」製作委員会

カネの価値が命よりも重いという徹底したリアリズムは前作と同様に今作も健在。
この作品に伏流する作者の感情とは、博打をコントロールする者への 怒りと、それに翻弄されるギャンブラーへの同情である。少なくとも私にはそう見える。

貸金業界の頂点に立つ帝愛グループが主人公やその仲間達を借金で彼らを支配し、まさに人生までをも拘束するのだが、返済不可能に堕ち入った負債者 は文字通り地下の工事現場で強制労働を科せられて、場合によっては一生涯陽の目を見ない人生を送ることを強いられる描写が寓意に満ちていて一笑に 伏せないところがなんとも恐ろしい。
本当はそんなことはあり得ないだろうと信じない人もいるかも知れないが、現実問題として借金のために死に追い込まれる人も少なくない。

この映画に限らず原作もカネの有り難みと恐ろしさを徹底的なリアリズムでもって描いているところがこの作品が多く世間で 支持される理由だろう。
そんな拝金主義の世相を描きつつ、カネに振り回されながらも人生においてカネよりも上位の存在があることを信じている主人公がなんとも清々しく、 カネに命を張ってもカネに汚くはない生き方につよく共感出来るのである。

前回は命を賭けたデスゲームがカネのために命を差し出す人間の悲哀がより濃く抽出されて緊迫感があったが、今回は1発4千円の高単価がウリのパチ ンコ台攻略がストーリーの主軸。
パチンコ台攻略に関しては生き死にに関わるようなストーリー展開は無いのだが、前回に参加者である中年の男が命と引き換えに得たカネを彼の ひとり娘に渡すよう主人公に託すのだけれど、その娘がストーリーのキー・パーソンとなって物語を牽引する。

前回に比べてギャンブルのゲーム性が強 く表れているのだけれど、賭け事を中心に人々の想いが交錯する演出が巧い。
世間一般ではギャンブルで身を持ち崩す人間に対して、醒めたまなざしと 軽侮が向けられたりするのではあるが、この映画を観れば、我々が向ける彼らへの批判が必ずしも正鵠を得たものではないことに気が付かせられるのである。

カネをめぐる人間の悲喜こもごもが今回も良く描かれているように思う。
誰もがカネの問題を抜きにして人生と向き合うことは出来ない。
だが、 カネの問題を越えた先に人生の本当の意味がある。
作者はそれをこの作品で指し示しているように思う。
だからこそこの主人公は「泥中の蓮」として描かれているのだ。

カネを支配しようとして足掻く者とカネを超えた上位の価値を信じる主人公とのコントラストが眩しく、観る者に大切なものは何か再び心のジャイロコンパスを持たされたような気がして気持ちをあらたにし、劇場をあとにすることが出来た。

青森 学

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