◆あくまでも海の世界の魅力にスポットを当てている(75点)
渡り鳥の生態を記録したフランス製ネイチャー・ドキュメンタリー『WATARIDORI』のジャック・ぺラン&ジャック・クルーゾーが、50ヵ所の海とそこに息づく数々の生物を記録した。
初めて海を見た少年の「海とは何なのか?」という疑問でスタートする本作。スクリーンに映し出される広大な海、群れを成すイグアナ、クジラ、サメ、ホッキョクグマ、ペンギンといった多くの人々が一度見たことがあるような生物から、あまり馴染みのない珍しい生き物までたっぷりと魅せつけてくれる。特に珍しい生物をお目にかかれるのは、この手の作品の最大の利点と言える。「こんな変わった生物がいるのか!!」という新たな発見ができるので大変興味深く、これだけでも観る価値は大きい。
驚くべき映像も十分堪能できる。一体となった魚群、カニの大群がゾロゾロと前進、広大な海をイルカの群れが一斉にジャンプしたりといったシーンは、観る者の印象に残ること間違いなしだと言っても良いほどだ。
他にも口を大きく開けたままの魚が観られ、この魚の口の中に別種の一匹の魚が入り込む。「この魚、わざわざ喰われようとしているのか? それとも何もわからず彷徨い込んだのか?」といった疑問を抱かせた上に想像を掻き立たせるようなシーンが他にも観られ、これもまた本作の面白さの一つでもある。
ネイチャー・ドキュメンタリーならではの弱肉強食の世界や環境問題的な視点も取り入れられているが、これらにムキになることなく、あくまでも海の世界の魅力にスポットを当てていることが何よりも素晴らしいことである。だから、観終えてからの後味も良い!!
(佐々木貴之)