◆前半ではドタバタ風のコメディーが観られ、後半ではシリアスな雰囲気を漂わせたりといった見応えのある演出で楽しませてくれる(70点)
かつてはボリショイ交響楽団の天才的指揮者だったアンドレ(アレクセイ・グシュコフ)も今となっては、単なる劇場の清掃員。ある日、パリのシャトレ劇場から二週間後のLAフィル公演が中止になったため、代わりのオーケストラを探しているというFAXを発見し、かつての仲間を集めて楽団を結成し、この公演に出演することを思いつくのだが……。
寄せ集めオーケストラが公演に出場して演奏を完璧にやり遂げるというサクセスストーリーである本作。真面目な音楽ドラマかと思いきや、前半ではドタバタ風のコメディーが観られ、後半ではシリアスな雰囲気を漂わせたりといった見応えのある演出で楽しませてくれる。
音楽ドラマということで、クラシック音楽を堪能できるのが良い。モーツァルト、バッハ、チャイコフスキーといった著名な音楽家の名曲が散りばめられているが、単に曲を聴かせてくれるためだけの全編クラシックたっぷりというものではなく、あくまでも物語を楽しむことを第一目的としており、音楽はその次という感じなのである。
ラストは当然の如く寄せ集めオーケストラによる演奏が観られるが、これがまたユニークに描かれている。普通にメンバーが集まり、キレイな感じで終わるのではない。メンバーが集まるときや演奏中にしっかりと注目し、その可笑しな様子を味わい、クスクスと笑って頂きたい。
(佐々木貴之)