オフサイド・ガールズ - 福本次郎

◆女であるというだけでサッカー観戦ができない、そんな理不尽な決まりを破りなんとか競技場にもぐりこもうとする若い女性たち。女性の人権を制限することがいかに無意味かを肩の力を抜いて訴えているところに好感を持てた。(70点)

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 女であるというだけでサッカー観戦ができない、そんな理不尽な決まりを破りなんとか競技場にもぐりこもうとする若い女性たち。ただW杯予選が見たい、その思いだけが彼女たちを走らせるのだが、ボディチェックは厳しく現実は甘くない。そんな彼女たちと、彼女たちを逮捕した兵士たちとの会話だけで、サッカーがいかにイラン人を熱狂させるかを丁寧に描いている。そしてこれだけ自由に情報がやり取りされる時代に、女性の人権を制限することがいかに無意味かを肩の力を抜いて訴えているところに好感を持てた。

 ’05年、Wカップ最終予選イラン?バーレーン戦に熱狂するイラン民衆。しかし、スタジアムには男性しか入れない。変装して監視の目をくぐって潜入した女性は兵士に捕らえられ、競技場外の通路に集められる。

 彼女たちが監禁されたところは、ピッチの様子は見えないが観客の声援は聞こえるという微妙なところ。時々湧き上がる歓声やため息で試合の趨勢を想像するしかない。見張りの兵士も同じで、気もそぞろで警備している。女たちは兵士をののしり、試合を見せろと要求するが、兵士たちはしどろもどろで訳の分からぬ理由で拒否する。兵士たちも頭の中では理屈に合わないと分かっていても、命令だから仕方なく彼女たちを拘束しているだけ。やがて身の上話などを始め、ひとりの少女がトイレからせっかく逃亡に成功するのに、また戻ってくるなど、人情に篤い国民性も描かれている。

 ハンディカメラで撮られた映像はスピード感よりも臨場感が優先され、女性たちのイライラする感覚がよく再現されている。またガチンコではなくユーモアで体制を批判し、小さなエピソードを重ねるうちに全体的な一体感をかもし出す手法も見事。結局、移送中のバスの中で勝利の報を受け、街中の熱狂の中で女性たちは逃げ出す。兵士たちももう追わない。自由になった彼女たちの姿は、旧弊から解放された女性像を象徴しているようだった。

福本次郎

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