◆フレディを演じるジャッキー・アール・ヘイリーは、ほとんど素顔を見せないが、それでも存在感は抜群(50点)
1984年の同名ホラー映画のリメイクだが、本作は、夢の中に現われる殺人鬼で、最強のホラーキャラ・フレディの新たな物語だ。郊外のエルム街に住むティーンエイジャーのナンシーやジェシーたち5人の男女は毎晩同じ悪夢に悩まされてた。それは、顔にはやけど、フェドーラ帽、赤と緑のストライプのセーターを着た醜悪な殺人鬼フレディ・クルーガーから襲われる夢だった。夢の中で執拗に襲い掛かるフレディだが、やがて仲間の一人が死んだことで、悪夢は現実とつながっていることを知る。なぜ自分たちが? 眠らずにいるにはどうすれば? やがて彼らは自分たちの両親がひた隠す、ある恐ろしい事実を知ることになる…。
夢に巣食う殺人鬼と、夢と現実がリンクする不思議。名作ホラー「エルム街の悪夢」はこの二つの斬新な設定が魅力だった。本作はまったく新しいフレディであると同時に、恐ろしい怪物を生むきっかけは、人間の疑心暗鬼であると訴える。真実を知るとどちらにも非があるように思えるし、夢の中が住み家というルールが崩れるラストには、納得しかねる点も。だが眠れない時間があまりに長いと、自動的に脳が“充電”するために、無意識のうちに眠りに入るという学説は面白い。これをマイクロ・スリープ状態と呼ぶらしいが、この点をもっと掘り下げれば、新生フレディの新たな誕生として迫力を増しただろうに。起きていようと眠っていようとフレディのえじきになるとなれば、もう彼らには逃げ場はない。フレディを演じるジャッキー・アール・ヘイリーは、ほとんど素顔を見せないが、それでも存在感は抜群。エルム街の都市伝説は、まだまだ続きそうな気配である。
(渡まち子)