エリザベスタウン - 前田有一

監督の思い入れが強すぎる(40点)

 オーランド・ブルーム、キルスティン・ダンストという現在もっとも人気のある若手俳優二人が競演したドラマ。監督は『あの頃ペニー・レインと』でアカデミー脚本賞を取ったキャメロン・クロウ。

 靴デザイナーの主人公(O・ブルーム)は、社運を賭けて取り組んだ自らの新商品が大コケし、社に莫大な損害を与えてしまう。そんな彼に、故郷の父が亡くなった知らせが届く。葬儀のためエリザベスタウンに向かった彼は、飛行機の中で人懐っこい客室乗務員(K・ダンスト)に出会う。

 この作品の脚本は、キャメロン・クロウ監督自身が、父の死をきっかけに執筆したものだ。その時の葬儀でたくさんの親戚と出会った彼は、父の死を悲しみつつも、自らのルーツや家族愛の暖かさを再確認し、深く感動したのだという。そして、そのときと同じ思いを観客にも味わってほしいとの思いを込めてこの映画を作った。

 どうやらその思い入れは相当強いようで、ストレートすぎて気恥ずかしくなるほどのメッセージが、随所にこめられているのが見て取れる。この"熱い思い"についていける人なら感動もするのだろうが、私にはかなり"イタい"と感じられた。

 大体この映画は現実味がなさすぎる。イケメンと美女によるロマコメならそれは問題にならないが、『エリザベスタウン』は決してそういうお気楽恋愛映画の類ではない。センチメンタルでノスタルジックな、心に染み入る大人の映画、といった線を狙ったまじめなドラマなのだ。

 とすると、靴の大手メーカーが倒産してしまうような大失敗(いまどきマーケティング調査もしないのか?)や、業務そっちのけで逆ナンにいそしむスチュワーデス(オーランドはイケメンだからありえるかもだが)など、のっけから現実と遊離した設定を連発するのはいかがなものか。

 まあ、百歩譲ってそのへんはいいにいても、あの父の葬儀における母のとっぴなスピーチや周りの反応などは、おとなしい私のような日本人にはちょいとついていけないものがある。家族の良さ、暖かさなんかを表現したい監督の気持ちはよくわかるが、あからさますぎやしないかと思う。

 キルステンとオーランドの組み合わせはとても良かったし、音楽業界出身の監督らしいさわやかな選曲も良かった。ストーリーも狙いもわかりやすく、誰が見ても退屈することはないだろうが、少々監督の想い一人歩きといった印象の一本だ。

前田有一

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