◆モヤモヤとした得体の知れない煙状の半物質でかなり不気味(45点)
最近、超常現象を扱う映画が立て続けに公開されているが、本作は実話とのこと。やはり理屈では説明できない不思議は世の中に存在するようだ。コネチカット州北部にあるビクトリア朝の一軒家に住むキャンベル一家。ガンを患う長男マットの病気治療のためにこの家に越してきたのだが、そこはかつて葬儀場だっただけでなく、不気味な儀式が執り行われていた場所だった。やがて一家に想像を超える恐怖が襲いかかる…。
エクトプラズムというのは、直訳すると細胞質外層。心霊科学で言うところの、霊媒の身体から発出するとされる半物質を指す。物語のベースとなる実話は1980年代の米国での出来事だが、世界中で、実際にエクトプラズムを写した写真が残っている。映画の中で登場するそれは、霊媒である少年の口から吐き出される、モヤモヤとした得体の知れない煙状の半物質で、かなり不気味だ。ただ、このエクトプラズム、肝心の物語にはほとんどからんでこないので、拍子抜けする。屋敷で起こる怪現象は、かつてそこに住んでいた強い霊力を持った少年と、家で処理された大量の死体の謎が原因だが、ゾッとするのは、悪霊は、病気で弱った身体、とりわけ死を間近にした人間の魂を取り込むということ。終盤、家とそこで行なわれた忌まわしい儀式のすべてを知ったマットが、捨て身の自己犠牲で悪霊と戦う姿は、彼が瀕死であることと重なって悲壮感に満ちている。家につく呪縛霊を描く“家ものホラー”の応用のような本作、最終的に「神の御力は計り知れない」となるのがいかにも欧米的だが、人間の心の中には恐怖という名前の半物質があり、それが怨霊と呼応すると考えれば納得できよう。
(渡まち子)