◆スタローンの下に、ジェット・リーやステイサムら、アクション・ヒーローたちが大結集した超豪華なB級映画。粗っぽいが、それが「荒々しい魅力」にもなっている(73点)
シルベスター・スタローンにジェット・リー、ジェイソン・ステイサム、ミッキー・ローク、ドルフ・ラングレン。元プロレス界のスーパー・スター、「ストーン・コールド」スティーブ・オースティン、UFCのランディ・クートゥア。さらにカメオ出演で今やカリフォルニア州知事のシュワルツェネッガーと、ブルース・ウイリス。よくこれだけのメンバーが集まったものだと思う。集まっただけでもう十分、本作は成功と言えるだろう。これだけ集まってしまったら、逆にいい映画にはなりにくいが、いい映画じゃなくても全く構わない。とにかくアクション・ヒーローたちの大集結を観たいのだから。
監督・脚本はスタローン。かつて、「天皇巨星」ジミー・ウォングがジャッキー・チェンらスターたちを無理やり集めて作った「ドラゴン特攻隊」(1982)という作品があったが、本作はスケールを10倍くらいにしたスタローン版「ドラゴン特攻隊」といえるかも知れない。
消耗品を意味する「エクスペンタブルズ」という傭兵部隊が、南米のある島の軍事政権を壊滅させるストーリーだ。スタローンの演出は相当に粗っぽい。どうやって島に侵入するのかと思ったら、水陸両用の飛行挺で普通に海から入っていくだけ。警備が厳しい将軍のアジトには、とにかく警備の兵隊たちを殺しまくって侵入し、あらゆるところに爆弾を仕掛け、爆発させる。緻密な作戦やサスペンスなんてまるで最初から放棄している。ファンはそんなもの期待していないからいいのである。スタローンはスタローンを演じ、ジェット・リーはジェット・リーを演じている。変に「役」になってしまったら、オールスターの意味がなくなってしまう。実に粗っぽいのだが、その粗っぽさは、魅力的な「荒っぽさ」でもあるのだ。
A級、B級という分け方は本来、製作費が多いか少ないかを言うので、本作は間違いなくA級なのだが、ムードは作品の質も含めて言われる、いわゆる(誤用だが)「B級映画」に近い。「超豪華なB級映画」と呼ぶべきだろうか。
とにかく、どの画面を切りとっても豪華なのだ。ジェット・リーとドルフ・ラングレンの、クンフーと空手の対決、スタローンとオースティンの筋肉対決などが見られるのもわくわくした。最後の方は爆発に次ぐ爆発。もう、これだけのメンバーの作品を締めくくるには、すべてを爆発させるしかなかったようだ。
顔ぶれを集めてしまえば後は勝手に出来てしまう、といった感じの雑な物語でも、メンバーを見ているだけで楽しいから仕方ない。しかも、そのメンバーたちが、豪華だけど「A級」(これは「一流」の意味)と呼んでいいのか微妙だ。ひとり一人が主演クラスで、かつてA級だったのは確かだが、スタローンもジェット・リーも年をとってしまったし、ミッキー・ロークは長いスランプから「レスラー」(2008)で脱出したばかり。ドルフ・ラングレンなんて、そもそも大した主演作がない。それに合わせて役の設定も、ロークは引退しているし、スタローンももはや引退寸前。ジェットは家族を持ちたいなんて言う。ラングレンに至っては、薬物中毒で頭がおかしくなっている。一方で、シュワルツェネッガーは大統領を狙っている。役と本人たちが微妙に重なり合っているのが何ともおかしい。
スタローンはアクションの見せ方が余り巧くない。せっかくの肉弾アクションの連続も、何がどうなっているのかよく分からない場面が目立った。それでも無闇な迫力だけは伝わってくるから凄い。スターたちがこれまで演じてきた様々なアクション映画の「歴史」のおかげだろう。また、「ランボー最後の戦場」(2008)で見せた残酷スプラッター路線は今回も引き継がれていて、血肉が派手に飛び散り、拷問場面もかなりリアル。細かいところに欠点はあっても、気合は入っているのである。
(小梶勝男)