◆とりあえず物語の続きを待つしかない(50点)
良くも悪くも観客を翻弄するシャマラン監督の新作だが、なんと物語半ばでプツリと終わる。これでは映画の評価は難しいのだが、とりあえずは、シャマランがストーリーより映像に重きを置いた点は注目したい。有史以前、気・水・土・火の4つの王国が均衡を保つ世界。各国にはそれぞれ4つのエレメントを操る“ベンダー”がいた。だが火の国が反乱を起こし世界を征服する力を得ようとして争いが起こる。4つのエレメントすべてを操ることができる“アバター”である、気の国のエアベンダー・アンに、世界の希望が託されるが…。
シャマラン映画は最近はコケてばかりだが、本作はお約束のどんでん返しを封印して、壮大なスペクタクルに初挑戦している。原作はアメリカのTVアニメ「アバター/伝説の少年アン」だ。それぞれ特徴のある4つの元素をベースにした国と、その国のベンダーを配した物語は、章立てで語るファンタジーとしてメリハリがある。アクションの要素も強い本作で目につくのは、東洋の格闘技を中心にしたマーシャル・アーツだ。主人公の少年アンを演じるノア・リンガーも、火の国の王子役のデヴ・パテルもテコンドーの達人というだけあって、動きは美しく流麗で見応えがある。だがシャマランが初挑戦というふれこみの3D映像には少々疑問が。なんでも最初は2Dだったものを無理に3Dに処理したとのことだが、本作で中心となる水と火の描写は2Dの方がストレートにその美しさを味わえたのではないだろうか。海がせり上がる場面も思ったほどの立体感は感じられない。それでも、特殊効果スタジオILMが手がけた、高度なCGを駆使した映像は、大画面で見るにふさわしいものだ。アバターとして選ばれたアンはその任務を受け止められず一度は逃げ出したが、世界の危機を目の当たりにして真のアバターとなるべく、気以外のエレメントの技を習得しながら旅をする。物語は続いていくが新たな友あるいは敵を得て、本物のアバターへと成長していくのだろう。アバターとは輪廻転生、気・水・土・火の順番で生まれ変わる選ばれし者。今後の物語で、どうシャマランのテイストを出していくのか。とりあえず物語の続きを待つしかない。
(渡まち子)