◆ウルヴァリンことローガンの失われた過去が遂に明かされる！（55点）
アクションやって歌って踊って、時々ナレーションやってと忙しく活動しているオーストラリア出身のスター、ヒュー・ジャックマン。そして彼を一躍銀幕の人気者へと押しやったのはやはり髭面でどこか孤独な雰囲気を持つ『Xメン』の主要キャラクター、ウルヴァリンだろう。2009年5月アメリカ映画界はサマーシーズンの幕が開けた。そこでサマームービーの第一弾作品として公開されるのがジャックマンが再び演じるウルヴァリンを主人公とした『ウルヴァリン：X- MEN ZERO（原題：X-MEN ORIGINS: WOLVERINE）』だ。
驚異的な治癒能力、鉄の爪、動物的感覚を持つウルヴァリン。彼はXメンのキャラクターの中でもひと際人気が高く、彼のスピンオフのシリーズもいくつかコミックとして出版されている。今回の映画は主にその中の「ORIGIN」シリーズが基になったストーリーで、通称ローガン（ウルヴァリン）で知られるジェームズ・ハウレットの生い立ちが明かされるのだ。
物語は1845年アメリカから始まり、まず幼いジェームズの拳から骨が突き出るミュータントとしての苦悩やリーヴ・シュレイバー扮する兄ヴィクターとの確執が描かれていく。ヴィクターもミュータントで、ジェームズと風貌は似ているが、彼は長い爪が武器になり、義侠心あるジェームズとは違い粗暴さが目立つ。彼らは共に高い治癒能力を持ち、若い肉体を保てる事から、現代までにあった戦争；アメリカ南北戦争、第一次、第二次世界大戦、ベトナム戦争へ徴兵され、彼ら兄弟が戦場で活躍する様を垣間みる事が出来る。
その後、この兄弟はウィリアム・ストライカー（ダニー・ヒューストン）の誘いで数人のミュータントから構成される「チームX」に所属する。しかし、無意味な殺戮を続けるチームに嫌気がさしたジェームズは1人チームを離脱する。その後、わたしたちはカナダ・ロッキー山脈に恋人カイラ（リン・コリンズ）と静かに暮らすジェームズの姿を見つける。そこに奇しくもある日ヴィクターが現れ、カイラを殺害、怒り狂ったジェームズはヴィクターに戦いを挑むが惨敗してしまう。それを機にジェームズは以前から力を貸して欲しいと言い寄っていたストライカーの元で映画『Xメン』シリーズでもお馴染みのあの実験（「ウェポンX計画」）に協力する事になる。
本作の監督は『トッツィ』『RENDITION』のギャヴィン・フッド。彼は本作をウルヴァリンの内面に焦点を当てた物語として描いており、観る側には本作は時にセンチメンタルに映るだろう。アクションやグラフィックの面でも映画『Xメン』シリーズよりも向上されており、特に序盤のチームXの最初の作戦のシーンは心躍らせてくれる。雰囲気的には2000年の『Xメン』に近い暗さがあるだろうか。激しいアクションの中でウルヴァリンの苦悩が描かれているので、心と体のバランスの取れた作品と言えるだろう。
それにしてもヒュー・ジャックマンという俳優は現実離れしている。2000年からウルヴァリンを演じているのだが、もう既に10年近く同じ肉体派の役を演じているんも関わらず、見た目が全く変わらない。今回はまた全裸を披露しているのが見所の1つで、40歳の俳優が全裸で滝からジャンプしたり、草原を全裸で駆け抜けたりする映像は目を疑う。これにはむしろ関心で、本作はヒュー・ジャックマンという俳優を実に上手に使った映画であると言えるだろう。
ウルヴァリンは記憶を持たない。映画『Xメン』シリーズでは彼が「ウェポンX計画」のフラッシュバックに苦悩し、彼が何かの実験に使われた様が描かれるが、本作ではその謎の部分をわたしたちは知る事となる。また彼の歩んできた人生を本作でおさらいする事で、ウルヴァリンというキャラクターに対し、その後に続く映画『Xメン』シリーズでより感情移入する事が出来るはずだ。また本作にはライアン・レイノルズ扮するデッドプールやテイラー・キッシュ扮するガンビット等イケメン俳優演じるキャラクターが登場し、ウルヴァリンが中心の物語を実に華やかに彩っている。
（岡本太陽）
