ウルヴァリン:X-MEN ZERO - 小梶勝男

◆「X-メン」シリーズのスピンオフだがCGもアクションもかなりレベルが高い。アカデミー外国語映画賞のギャヴィン・フッドが監督し、ドラマ部分もしっかりと描かれた力作(80点)

 「X-メン」シリーズのスピンオフ作品。主要キャラクター、ウルヴァリンの誕生秘話を描いている。

 ミュータントとして生まれ、兵士となって150年間以上、戦場を駆け回っていた兄弟がいた。弟ローガン(ヒュー・ジャックマン)は余りに非人道的な任務に嫌気が差し、戦場を離れる。恋人とともに静かに暮らしていたが、ある日、兄ビクター(リーヴ・シュレイバー)が現れて、恋人を殺してしまう。悲しみと怒りに狂うローガンは、自身の戦闘能力を大幅にアップさせるため、謎の組織の誘いで改造手術を受ける。それは、地球上で最も硬い超金属アダマンチウムを全身の骨格に移植することだった。謎の組織の巨大な陰謀も明らかになり、ウルヴァリンとして生まれ変わったローガンは、復讐の旅に出る。

 今回も様々なミュータントが登場する。「ルパン三世」の石川五ェ門の斬鉄剣のように、ヘリコプターも飴のごとく斬ってしまうウルヴァリンの爪。これも五ェ門の如く弾丸を刀で斬るデッドプール。銃を自在に操るエージェント・ゼロ。カード捌きと棒術の達人、ガンビット。まだまだ出てくるが、これらミュータントの描写が凄い。「ルパン」の五ェ門の技は、マンガならではの表現だと思っていた。それを実写で見ることが出来て、しかもリアルに感られるのだから、それだけでも見る価値があるではないか。

 主人公は改造手術を受け、その後、オートバイでヘリコプターとのチェイス、さらに、秘密基地でミュータントと戦う。この展開、私の世代には懐かしい。子供の頃、テレビで見た「仮面ライダー」を思い出すのだ。「ライダー」を思い切り金と時間をかけ、スケール・アップしたら、本作のようになるのかも知れない。「ライダー」世代にとっても夢の映画だ。

 一方で、監督がアカデミー外国語映画賞を受賞したギャヴィン・フッドで、ドラマ部分もしっかりとしている。愛情も憎悪も怒りも人並み外れて激しいローガンという人間の「激情の表現」として、激しいアクションが描かれている。ドラマの盛り上がりが、ちゃんとアクションにつながっているのが素晴らしかった。

 キャラクターの「ビギニング」ものは、キャラクターの素性が知れてしまうことで、ミステリアスな魅力や得体の知れない怖さが弱まってしまう場合も多いが、本作は逆に素性が知れたことで、よりキャラクターの魅力を増すことに成功している、数少ない例だと思う。

 それにしてもウルヴァリンが150歳を超えていた、というのは驚きだ。最初は子供だったのに、いつの間に成長し、いつの間に年をとらなくなったのだろう。ヒュー・ジャックマンにインタビューした際、それを尋ねると、「その辺はちょっと考えるべきところだね。僕がこれからもウルヴァリンを続けるとなると、だんだんウソになってくるね」と苦笑いしていた。年をとらないミュータントを、年をとる人間が演じる難しさ。ジャックマンもハリー・ポッターのラドクリフと同じ悩みを抱えていた。

小梶勝男

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