◆あまりに露骨な二番煎じの内容に苦笑(30点)
実話をもとにした映画「マリと子犬の物語」のスタッフが、再び子供と動物という鉄板ネタで仕掛ける感動物語だが、あまりに露骨な二番煎じの内容に苦笑した。母親の入院をきっかけに獣医の父がいる北海道で暮らすことになった幼い兄妹のすばるとしずく。ほとんど一緒に暮らしたことがない父や慣れない土地での生活に戸惑っていたが、美しい自然の中で、少しずつ日々の暮らしになじんでいった。そんなある日、森でオオカミに似た子犬と出会い、ウルルと名付けて飼うようになる。だが、ウルルが絶滅したエゾオオカミである可能性が出てきたことで、野生動物保護協会がウルルをしかるべき機関で育てるべきと主張する。
北海道には「オオカミの国」と伝えられる伝説の“ホロケシ”という場所がある。幼い兄妹がウルルをその場所に連れて行こうとするのは、ウルルが自分たちと同じように母親と離れ離れになっていると思うからだ。だが、それなら森でウルルを拾って自分たちのもとで飼うことだって引き離すことじゃないか。そもそもこの時点で、人間に都合が良すぎる物語だ。幼い兄妹が大自然の中で、野生動物にとって何が大切かを学べば、それがそのまま、家族の絆を学ぶことになるだろうに。絵本で見た伝説のホロケシを目指す旅は、よく知らない場所を子供だけで歩いて目指すにはあまりにも無理があるし、ウルルが演技らしい演技をせず、オオカミの本能を感じられないのも説得力に欠ける。終盤は、無理やりこじつけた感動ファンタジーになり脱力してしまった。キタキツネやエゾシカ、エゾリスなど、劇中に出てくる動物たちはとても愛らしい。物語に無理が多いのが残念だが、北海道の自然の素晴らしさは堪能できる。
(渡まち子)