ウルフマン - 渡まち子

ウルフマン

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◆映画は主人公の内面の深みにはあまり言及せず、父と息子の確執へと移行する(60点)

 狼男といえば恐怖映画の不動のレギュラーメンバーで、ホラーにもコメディにもなる便利な素材。意外性のあるキャスティングと、格調高く正統派アプローチで描く本作は、さしずめゴシック・ホラーだ。19世紀末、人気俳優のローレンスは生家ダルボット城がある村に帰郷する。到着早々、無残な兄の遺体と対面するが、それは人間以外の魔物の手による犯罪としか思えぬほど切り裂かれていた。村人はウルフマンの仕業として恐れ、犯人の捜索が行なわれるが、ローレンスはウルフマンに襲われた上、自らもウルフマンに変身してしまう…。

 ウェアウルフやライカンなど、獣人伝説は世界中のあらゆる時代に存在する。だが科学と魔術が共存する19世紀末の英国はもっともふさわしい舞台のひとつだろう。本来、狼男の物語は、満月の夜になるとおぞましい殺人鬼に変身してしまうという、いわば多重人格の変種のようなもの。普段は押さえ込んでいる本能が目覚めてしまうところから、精神医学的な解釈も多くなされた。だが、映画は主人公の内面の深みにはあまり言及せず、父と息子の確執へと移行する。これがホラー映画から離れてしまった要因なのだが、それはそれで俳優の演技を際立たせた。ウルフマンに変身し苦悩するローレンスを、わざと凶行に走らせた上に警察へ引き渡す父親ジョンの不可解な行動には、25年前の妻の死にまつわる秘密が。それを解き明かす過程はサスペンス、ウルフマンの蛮行はスプラッタ、ローレンスの苦悩と顛末は人間ドラマと、多重性のある物語は、狼男の出自とも重なり合うものだ。狼男映画には、ロン・チェイニー・ジュニアが主演した1941年の決定版「狼男」をはじめ、数多くの作品がある。お勧めはニール・ジョーダンの赤頭巾異聞「狼の血族」だが、ほとんどノーメイクのジャック・ニコルソンが立派に狼男に見える「ウルフ」も捨てがたい。特殊メイクの第一人者リック・ベイカーに、初めてのオスカーをもたらした「狼男アメリカン」も必見だ。本作では、CG全盛の時代に、あえて大部分を、前述のリック・ベイカーによる特殊メイクで表現した。映像と物語とで、変身、救済、再生とが構築される様が興味深い。人の手によるモンスターの創造という意味でも。

渡まち子

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