ウディ・アレンの夢と犯罪 - 福本次郎

◆仲の良い兄弟は金持ちになる夢を見る。それは成功した人々のアイデアや勤勉を見習うのではなく、稼いだカネという結果に憧れる浅はかなもの。幸運は簡単に訪れるはずもなく、ふたりが陥穽に落ちていく過程は教訓に満ちている。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 仲の良い兄弟は金持ちになる夢を見続ける。それは世間で成功した人々のアイデアや勤勉を見習うのではなく、稼いだカネという結果に憧れる浅はかなもの。兄は怪しげな投資に夢中になり、弟はギャンブルで一攫千金を狙う。そんな、貧しさにあえいでいるわけではない、それでも今より豊かになりたい人間の愚かな欲望に油を注ぐ21世紀的な拝金主義に、映画は強烈なしっぺ返しをくらわせる。自分の利益にこだわる彼らに幸運は簡単に訪れるはずもなく、ふたりが陥穽に落ちていく過程は教訓に満ちている。

 イアンとテリーの兄弟は中古ヨットを買い、束の間リッチな気分に浸る。ある日、イアンは女優のアンジェラと知り合い、彼女の歓心を買うために見栄を張ろうとする。一方のテリーは賭博で莫大な借金を作ってしまう。タイミングよくやってきた裕福な伯父がある男の殺人をふたりに依頼する。

 いまやシティの金融街に勤めるビジネスマンだけでなく、労働者階級ともいえるこの兄弟までがマネーゲームに奔走する。そこには地道に働いて対価を得るという価値観は時代遅れで、「頭を使って」=「楽して」カネを産むことがよしとされる。レストラン経営汲々とする父、ドライバーとして家族を支えたアンジェラの父、投資をせずに儲けそこなった旧世代の人々はまるで敗者のごとく描かれる。反対に整形外科医としてあくどく儲けた伯父は家族のヒーロー。この家族の会話、特に母が伯父を称賛する様子はカネの魔力がいかに市井の人々の心を毒しているかをリアルに物語る。

 兄弟は伯父との約束を実行する。イアンのビジネスははかどりアンジェラとの仲も順調、彼は成功を手の届くところまで引き寄せる。一方のテリーは良心の呵責にさいなまれノイローゼになる。そして他人を手にかけた者はその報いを受ける予定調和的な結末に落ち着く。全般的に話を急ぐかのようなテンポは、登場人物の感情に踏み込もうとせず、生活のディテールも省き、ストーリーのの表層をなぞっている感じ。ウディ・アレン作品にしては人生に対するアイロニーもウイットも乏しく、スノビズムを揶揄するわけでもない。もっとこの兄弟をシニカルもしくはコミカルな視点でとらえたほうが、アレンらしかったのではないだろうか。。。

福本次郎

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